関西小劇場の新拠点、地域に根ざし危機を打開
文化の風

関西タイムライン
2019/12/6 7:01
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シアターE9京都と芸術監督のあごうさとしと劇場併設のコワーキングスペース(左、京都市)

シアターE9京都と芸術監督のあごうさとしと劇場併設のコワーキングスペース(左、京都市)

小劇場が相次ぎ閉鎖する一方、劇場の新築や新たな運営を模索する動きも目立っている。大阪市ではインディペンデントシアターが傘下の2館を自社物件に切り替える。京都市では演劇人がクラウドファンディングなどで資金を募った新劇場、シアターE9京都がオープンした。

インディペンデントシアターは大阪・日本橋で2館の小劇場を展開する。賃貸で入居したビルを劇場に改装して2000年から運営するが、今年インディペンデントシアター1st(席数80)を近隣に移転し自社所有の劇場として新築オープン。同2nd(同160)も来秋、同様に新築して開業する。

同劇場はアニメなどのソフト・グッズ販売を手掛けるジャングル(大阪市)の一事業。主力事業への「種まき」としてクリエーター育成を目指す。

■自社所有に転換

シリアスな会話劇からエンターテインメント性の強い作品まで「何でも受け入れる。劇場のカラーがないのがカラー」(プロデューサーの相内唯史)。近年人気が高まる漫画やアニメ、ゲーム原作の舞台化作品「2.5次元ミュージカル」で活躍する演出家など多様な人材が育った。ただ劇場で「利益を出すのは難しい」(同)。今回の投資も「閉館か新築か。ギリギリの選択だった」と明かす。

自社所有となったことで長期の安定運営が期待できそう。ただ劇場単体では利益を生まずクリエーターへの投資という「志」が支える点は、閉館を余儀なくされてきた劇場と重なる。大阪の演劇界が長年抱える「劇場オーナーの志に依存した構造」(應典(おうてん)院の秋田光彦住職)を変えるには演劇人自らが劇場文化を醸成する拠点を切り開くアプローチが必要だろう。

モデルとなり得るのが、演出家あごうさとしら京都の演劇人が中心となり今年6月にオープンしたシアターE9京都(京都市)だ。

■収益源を多彩に

同劇場が革新的なのは「新しい劇場のビジネスモデル」を作ろうとしている点だ。併設したコワーキングスペースの家賃、劇場会員の年会費、企業協賛金、他劇場へのコンサルティングフィーなど新たな収入と主な収入源である貸館料との最適な収益ミックスを模索する。運営には貸館料以外に年間1千万円以上が必要。数年のめどはたっているが、長期的に持続させていくことが課題だ。

劇場を利用者だけで支えようとすれば「貸館料は今の2.5倍」(あごう)、活動基盤の弱い若手は利用しにくくなる。「作品の質の確保、(新たな才能の)発掘・育成、経営。3つを追求するにはこの形しかない」(同)

演劇振興のためにも、劇場が多様な収益源を確保するためにも、社会に演劇の真価を理解し応援してくれる層を広く厚く育てていく必要がある。併設のコワーキングスペースを利用するビジネスパーソンと演劇を制作する試みや地域との連携にも力を入れる。

11月には劇場近隣の空き地で入場無料のお祭り「東九条野外劇場」を開催。アーティストの森村泰昌による新作能などを楽しむ地域住民らでにぎわった。開館半年弱で「演劇に関心のなかった地域の人も劇場に足を運んでくれるようになってきた」。支配人の蔭山陽太は手応えを話す。

今年、大阪城公園に大小3つのホールを備えたクールジャパンパーク大阪(300~1100席)がオープンし、関西小劇場ブームの中心地だった扇町では再開発施設に200席規模のホールが入る計画がある。東大阪や堺などで相次いで新設・改装された公共ホールを含め演劇に使える空間の整備自体は進んでいる。

ただ、若手劇団の育成、演劇ファン以外にも届ける普及・啓発まで担える拠点は数少ない。かつての扇町ミュージアムスクエアや應典院はそんな機能も果たし、E9もその責任に自覚的だ。演劇と社会の距離が開いている現状を変えるための行動が求められている。(佐藤洋輔)

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