米朝、非核化巡り緊迫局面 北朝鮮「下旬に重大決定」
【ソウル=恩地洋介、ワシントン=永沢毅】北朝鮮の非核化を巡る交渉が膠着するなか、米朝関係が再び緊張局面に入りつつある。トランプ米大統領は挑発姿勢を取る北朝鮮に軍事力行使も辞さないと強調、北朝鮮は12月下旬に「重大決定」をすると予告した。北朝鮮は年末に交渉期限を設けている。協議が進まなければ、核やミサイルで危機を演出する戦術を再開する可能性がある。

ロンドン訪問中のトランプ氏は3日、北朝鮮の挑発を巡り「米国は世界最強の軍隊を持つ。願わくば米軍を使いたくないが、必要があれば使うことになる」と記者団に語った。金正恩(キム・ジョンウン)委員長に関して「ロケットを飛ばすのがとても好きだから『ロケットマン』と呼んでいる」と述べた。
トランプ氏が公の場で軍事力行使に触れて警告するのは、米朝首脳が対話を始めた2018年6月以来初めて。トランプ氏は米朝が緊張を高めた17年9月に金正恩氏を「ロケットマン」と呼んだ。非核化の取り組みが進まないことに不満を示したともとれる。
この発言に先立ち、北朝鮮外務省はリ・テソン外務次官(米国担当)の談話を出していた。米国に譲歩を迫る内容で「近づくクリスマスのプレゼントに何を選ぶかは米国の決心次第だ」などと、米国に協議停滞の責任を押しつけた。
朝鮮半島周辺では軍事的な緊迫感が高まりつつある。北朝鮮が11月28日に大型多連装ロケット砲を日本海に向けて連射した前後から、米軍は連日のように偵察機や哨戒機を出動させている。聯合ニュースによると、3日には偵察機「E8ジョイントスターズ」「RC135U(通称コンバットセント)」が同時に朝鮮半島上空を飛行した。
韓国の情報機関によれば、東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射試験場近くでは活発な車両の動きがみられる。鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は4日の会議で「北朝鮮が軍事活動を増強しており、韓国軍が鋭意注視している」と述べた。
こうしたなか4日の朝鮮中央通信は、朝鮮労働党が12月下旬に中央委員会総会を開き「変化した内外情勢の要求に即して重大な問題を討議、決定する」と報じた。18年4月の総会では金正恩氏が核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験中止を表明している。
専門家は米朝の膠着が解けない場合、北朝鮮が非核化交渉の中止や「核保有国」としての地位強化を宣言する可能性を指摘する。「人工衛星」と称して事実上の長距離弾道ミサイルを発射するとの見方もある。
4日の北朝鮮メディアは、人民軍幹部を伴って「革命の聖地」とする白頭山(ペクトゥサン)を訪れた金正恩氏が制裁に屈しない姿勢を強調したと伝えた。同氏が白頭山を訪れるのは重大な決定を下す際が多いとされる。
トランプ氏にとって朝鮮半島の緊張緩和は20年大統領選に向けて有権者に訴える材料だ。北朝鮮が核・ミサイルの実験を再開すればメンツを失い、トランプ政権も強硬姿勢に転じざるを得なくなる。