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神奈川県内に本店のある8信用金庫の2019年4~9月期決算が出そろった。本業のもうけを示す実質業務純益は5信金で前年同期を下回った。貸出金残高は8信金すべてで増加した一方、貸出金利回りは全信金で低下した。低金利の長期化で収益環境が厳しさを増すなか、各信金は有価証券の運用や経費削減で利益率の底上げを目指す。
川崎信金は人件費や減価償却費の減少で実質業務純益が増加した(川崎市の本店)
横浜信用金庫(横浜市)、湘南信用金庫(横須賀市)、平塚信用金庫(平塚市)、中栄信用金庫(秦野市)、中南信用金庫(大磯町)の5信金で実質業務純益が減少した。平塚信金は有価証券の利回り低下による配当金の減少が響いた。横浜信金は物件費など経費がかさんだことが減益につながったという。
実質業務純益が減少した信金のうち、平塚信金を除く4信金は税引き利益がプラスになった。湘南信金は貸倒引当金の繰入額が前年同期の5分の1程度にとどまったことで、税引き利益が大幅に増えた。
実質業務純益が増加したのは3信金だった。川崎信用金庫(川崎市)は人件費や減価償却費の減少、かながわ信用金庫(横須賀市)はATMの一部撤去による維持費などのコスト減が寄与した。ただ、前期に貸倒引当金の戻し入れや株式売却益があった反動で、税引き利益は両信金とも減少した。
貸出金残高は8信金すべてで増加したものの、低金利の影響が大きく、大半の信金で実質業務純益には寄与しなかった。貸出金利回りは全信金で低下。「利回りが上がらないと、本業で(利益を)上げていくのは厳しい」(横浜信金)。貸出金利回りの下げ幅については「抑えられた」「縮まってきている」との指摘があった。
全信金で融資が増加傾向のなか、目立つのは個人向け融資だ。消費者ローンのほか、住宅ローンなどで長期型の融資が伸びた信金もあった。
かながわ信金は効率化に向け、一部店舗で休業時間を設けている(横浜市内)
融資による収益向上に限界があるなか、各信金は資金運用や経費削減に力を入れている。唯一、実質業務純益と税引き利益が増加したさがみ信用金庫(小田原市)は、国債など債券の売却を進め、6億円の収益増につなげた。担当者は「低金利で本業が厳しいからこそ、運用面で積極的に動いている」と話す。
かながわ信金は18年下期から一部店舗で窓口業務に「昼休み」を設け、店舗運営を効率化している。店舗の再編・削減でコスト減を図る銀行はあるが、県内の信金ではまだ具体的な動きは出ていない。「地域に根ざした信金なので(大手銀行のように)簡単に店舗を閉じることはできない」(さがみ信金)と慎重だ。