デジタル課税、摩擦激しく 米が仏に報復関税表明

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2019/12/3 22:47
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トランプ米政権は2日、フランスのデジタルサービス税を「米企業への不当な差別税制」と断じ、2020年1月にも報復関税を発動すると表明した。イタリアやオーストリア、トルコの同様の税も不当として調査を検討する。米国を含む主要国はデジタル分野の国際課税ルールづくりを急ぐが、主導権争いによる摩擦が激しくなっている。

仏では19年7月、巨大IT(情報技術)企業に絞って独自課税するデジタルサービス税が施行になった。同国はネット事業の売上高の3%に課税するが、対象は世界で7億5千万ユーロ(約900億円)超の売上高がある大企業に限る。課税対象27社のうち17社は米企業で、仏勢はネット広告会社のクリテオだけだ。

このため米通商代表部(USTR)は報告書で「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)など米企業を狙い撃ちした措置」と批判を強めた。

米国は対抗措置として24億ドル(約2600億円)分の仏製品63品目に、20年1月にも制裁関税を発動する方針も表明した。報復関税はスパークリングワインやチーズ、ハンドバッグなど仏が米国内でも競争力をもつ特産品を逆に狙い撃ちにする方針で、マクロン政権にプレッシャーをかける。

トランプ米大統領は3日、訪問先のロンドンで「他国に米企業を悪用されたくない」とフランスを批判。米国のIT企業に課税する場合には「フランスではなく我々がやる」と強調した。

一方、ルメール仏経済・財務相は3日「(米が報復関税をかければ)欧州連合(EU)は強力に反撃する用意ができている」と応戦した。同国では経済格差に不満を持つ労働者層が18年に「黄色いベスト運動」と呼ばれる全国的な抗議活動を展開し、それが巨大IT企業を狙ったデジタル課税に発展した経緯がある。

今回、米仏間のつばぜり合いが表面化したが、欧州を中心に独自にデジタル課税の導入を検討する国は少なくない。USTRは2日、フランスだけでなく、オーストリアやイタリア、トルコの3カ国を名指しして調査に入ると表明。「米企業に不当に照準を定めた保護主義に対抗する」(ライトハイザーUSTR代表)と制裁関税の拡大をちらつかせる。

欧州では2010年代に相次いでグローバル企業の大規模な節税策が明るみに出たこともあり、巨大IT企業への課税を求める政治的圧力が強まった。英国のハモンド財務相(当時)は6月、「不平等に対する国民からの政治的プレッシャーがあった」と認めている。

米国と欧州の対立のようにみえるが、動画・音楽配信など国境を越えて広がるネット事業をどのように課税していくかは世界的な課題だ。IT企業は知的財産権を低税率国に置き、営業所や工場などがない消費地での課税を回避。経済協力開発機構(OECD)によると、巨大企業の節税規模は世界の法人税収の4~10%に相当する1000億~2400億ドルに達するとされる。

OECDは19年10月、IT企業に限らず消費サービスを提供する国際企業の課税を強化する案を公表した。国ごとの売上高に応じて、税収を各国に分配する仕組みを提唱し、国際ルールは「GAFA狙い撃ち」に反対してきた米国にも配慮して整備が進む。

ヤマ場にあるOECDの課税ルールづくりは、対象となる企業を線引きするための基準など細かな点で「国際的な政治闘争のまっただ中にある」(米財務省関係者)。一橋大の吉村政穂教授は、米国の動きについて「フランスだけでなく他国でもデジタルサービス税導入の動きが止まらないため、けん制の意味合いがあるのだろう」と分析する。ただ欧州勢に根深い米企業への反発が一段と強まれば、国際協調を難しくするリスクもある。

(ワシントン=河浪武史、八十島綾平)

【識者コメント】
森信茂樹・東京財団政策研究所研究主幹 米国の動きは、独自課税に動く国々への「経済協力開発機構(OECD)が10月に示した国ごとの売上高に応じて、税収の一部を分配する案に早く合意しよう」という、トランプ大統領流のメッセージと見るべきだ。
 原案は「GAFA狙い撃ち」の色彩が以前より薄く、米国は合意に前向きだ。だが議論がまとまらず独自課税が相次げば、米IT(情報技術)企業が苦しみかねない。トランプ氏は、そんな状況を避けたいとみられる。
 税収面では原案は新興国も含めて、どの国にも利点が見込める内容だ。米国のプレッシャーにより、早期合意の機運が高まるかもしれない。

レミ・ブルジョ仏国際関係戦略研究所(IRIS)研究員 米国に限らず、世界中の国がIT(情報技術)大手により多く税金を払わせたいと考えている。現段階の課税額がいくらになるかよりも、課税法の国際合意を巡る力比べに勝つことが重要になっている。
 経済協力開発機構(OECD)がデジタル課税の枠組み案を示し、舞台裏で激しい綱引きが始まっているはずだ。米国が今回のような劇場型の対応で圧力をかけるのも驚きではない。
 米政権はIT大手を守っているわけではなく、例えば米アマゾンを強く批判している。税金を米国で払わせたいだけだ。
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