ブラジル、対中大豆輸出にブレーキ 1~10月26%減 アフリカ豚コレラ流行で

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2019/12/3 17:24
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【サンパウロ=外山尚之】ブラジル経済の低迷が続くなか、けん引役となっていた輸出が苦戦している。特に農業分野で最大の輸出国である中国でアフリカ豚コレラ(ASF)が流行した結果、豚の飼料用大豆の輸出が急減し、1~10月の大豆・大豆加工品の輸出額は前年同期比26%減となった。ブラジルは米中貿易戦争の漁夫の利を得る形で農畜産物の輸出を増やしてきたが、足元で逆風にさらされている。

中国への大豆輸出はブラジル経済のけん引役となっていた(北部トカンチンス州)=ロイター

「19~20年度のブラジルの中国向けの大豆輸出は10%減少する」。農業分野のコンサルティングを手掛けるアグロコンスルチは11月28日、ブラジル産大豆の中国向け輸出が今後、減少するとの見通しを発表した。ブラジルにとり、中国は輸出全体の約3割弱を占める最大の輸出先。中でも大豆・大豆加工品は対中輸出の3分の1を占める最重要品目だ。

米国と中国の貿易摩擦が激化するなか、ブラジル産の大豆は米国産品の代替に選ばれ、18年の大豆・大豆加工品の対中輸出は前年比34%増と、漁夫の利を得る形で急増していた。

しかし特需は今年に入り、突如終わった。中国でアフリカ豚コレラが流行し、豚の飼育頭数が減少したことで飼料の需要が急減したためだ。中国向けの大豆・大豆加工品の輸出は今年3月から前年実績を割り込むようになり、7~9月は前年同期比37.8%減と落ち込んだ。1~10月でも同26%減で、17年実績も下回る。

ブラジル政府は豚肉の輸出増加を進めており、1~10月の豚肉の輸出額は同67.3%増と好調だ。もっとも中国向けの豚肉の輸出総額は大豆・大豆加工品の40分の1にすぎない。19年のブラジルの対中輸出は3年ぶりに前年実績を割り込む可能性が出てきた。

中国に次ぐ輸出国である米国との貿易にも暗雲が垂れ込める。トランプ米大統領は2日、ブラジルとアルゼンチンに対し「大幅な通貨切り下げをしている」として突如、両国から輸入する鉄鋼とアルミニウム製品に追加関税を課すと表明した。

米州大陸ではブラジルの鉄鋼会社が自国内で生産した鉄鉱石をもとに半製品を米国に輸出し、米国企業が加工して建設現場や自動車工場に供給するサプライチェーンが構築されている。これらの鉄鋼半製品はブラジルの対米輸出額の9%を占める。トランプ政権が18年に同様の関税導入を掲げた際、ブラジルは数量制限を受け入れることで関税免除となった経緯がある。

親米を公言するブラジルのボルソナロ大統領は「必要であれば、トランプ氏と話す。私は彼と対話のチャネルを持っている」と述べるが、トランプ氏との個人的な関係が通商交渉にどこまで寄与するかは不透明だ。今回、トランプ氏は関税引き上げの理由について「米農家に好ましくない」としており、米国と競合するブラジルの農業に狙いを定めた懸念もある。

ブラジル経済は15年から16年にかけて2年連続でマイナス成長を記録し、回復の足取りは重い。内需や投資の戻りが遅いなか、輸出が経済をけん引する構造となっていた。しかし足元では隣国アルゼンチンの通貨危機で自動車の輸出が落ち込み、1月に発生した鉱山ダム事故の影響で鉄鉱石の輸出も減少するなど、逆風が続いている。

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