今日も走ろう(鏑木毅)

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屋外スポーツで山村振興を 大会に併せ山道整備も

2019/12/5 3:00
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今年10月に日本列島を襲った台風19号の爪痕がまだ各地に残っている。不自由な生活を強いられている人々も多く、一日も早く普段の日常が戻ることを心から願う。

メディアではあまり取り上げられていないが、この災害では東日本の山間部の生活道や山道も甚大な被害にあった。このためトレイルランニングを含めたアウトドアスポーツのイベントの多くが中止となり、翌年以降の開催のめどさえ立っていない状況だ。

毎年レースが行われる富士山周辺で楽しくゴミ拾いをしている

毎年レースが行われる富士山周辺で楽しくゴミ拾いをしている

私がプロデュースする群馬県神流(かんな)町の神流マウンテンラン&ウォークも11年目で初めて中止になった。先日も現地調査に訪れたところ、山道やそのアクセス道路の被害状況は惨憺(さんたん)たるものだった。日本はこれからも今年以上に災害のリスクが高まると予想され、秋のアウトドアスポーツがこれまでのように開催できるかどうか心配でならない。

アウトドアスポーツは大きな可能性に満ちている。

先進国でも国土の70%を森林が占めるこの国にとってはなおさらなのだ。林業が衰退の一路をたどっているのにこれほど広大な林間部は有効な活用法がない。かつての山あいの道は廃道となり、地域差はあるものの総じて人が訪れることのできるエリアが少なくなっている。

欧州の林間部にレースや合宿で訪れると、さまざまなアウトドアスポーツが行われ、地域活性化やスポーツ振興の場として大いに有効活用されているのを目にする。歴史的に欧州は畜産を振興するため広大な森を伐採してきた。日本とは自然に対する考え方の相違がある。それは認めた上で、見習うべき点もあるのではないだろうか。

とはいえなかなかうまく事が運ばないのも現実。理由は行政機関との手続きや、自然保護や山間利用を主張する団体などとの協議や調整に多くの時間と労力がかかることにある。アウトドアスポーツの歴史は日本ではまだ浅く、十分に理解されていないため、やむを得ない側面もあるけれど、このような状況はなんとかして変えていく必要がある。

多くのトレイルランニング大会では開催に併せ、登山道の整備や清掃活動を行うことで地域にも大きなメリットをもたらす流れをつくっている。このような社会的好循環を生む魅力や可能性から、近年はアウトドアスポーツを仕事にしたいと思う若者も増えてきた。それでもこの世界に夢を託すには心細いというのも現状だ。

国際的にはスポーツをする権利「スポーツ権」はユネスコの憲章として採択され、基本的人権と考えられている。ところが国内では具体的な指針が定まっていない。東京五輪によりスポーツに対する機運はこれまでにない高まりを見せている。広くスポーツに関わる人材の環境を国レベルで整えることが必要だろう。森林活用とともに地域を盛り上げるのにアウトドアスポーツの有効性があらためて評価され、地域振興の一助になればと思っている。

(プロトレイルランナー)

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