千葉県は3日、崖崩れや土石流などの重点対策を実施する「土砂災害警戒区域」の指定を2021年5月までに終える方針を示した。指定に必要な基礎調査を19年度中に完了し、まずは現在36%の指定率を20年5月末には50%に引き上げる。10月の大雨では未指定区域で土砂崩れが発生し、死者が出た反省を踏まえ、調査や住民説明の手続きを急ぐ。
森田健作知事が3日の県議会本会議で明らかにした。従来は指定完了の目標時期を定めていなかったが、大雨・台風シーズンが始まる5月末を期限に進捗目標を設けた。
知事はこれまでの指定作業について「住民や土地・建物所有者の十分な理解を得るべく、丁寧な説明を行ってきたため、時間を要していた」と説明。今後は人命保護を優先し、早期指定をめざすと強調した。
対象地域に暮らす住民の理解を迅速に得るため、県は住民説明会を従来より広い地域単位で開いたり、出先機関に期間限定の相談コーナーを設けたりする手法を検討している。「反対意見には個別に対応しつつ、指定作業を先行させる方法を考えたい」(県河川環境課)という。
国土交通省によると、千葉県内で土砂災害警戒区域の指定が必要とされる1万1084カ所に対し、10月末までに指定が終わったのは4094カ所。指定率は36.9%と全国平均(89.3%)を大きく下回り、都道府県では最低水準だ。
台風・大雨対策に関連し、高橋渡副知事は3日の本会議で、主要河川で「1000年に一度」の豪雨を想定した洪水浸水想定区域の指定や公表を急ぐ方針を示した。
洪水発生リスクのある「水位周知河川」に定める県内26河川に関し、従来は21年3月末までに指定・公表を完了する予定だったが、目標時期を20年5月に前倒しする。すでに指定・公表済みの手賀沼に続き、19年中に8河川、20年5月までに残る17河川の指定・公表を終える。
これまで千葉県の防災対策は地震や津波を想定した内容が中心で、土砂災害警戒区域の指定など台風や大雨への備えが手薄だった。今後は風水害リスクを強く意識し、地域防災計画の見直し作業を進める。