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7000年前のスウェーデン女性を復元 高い地位、浅黒

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

およそ7000年前、現在のスウェーデン南部に広がる豊かな湿地帯や森に住んでいた女性を考古学者であり彫刻家でもあるオスカー・ニルソン氏らのチームが復元し、2019年11月17日からスウェーデンのトレレボリ博物館で公開している。

考古学者らは、その女性に「22」という番号を振った。ニルソン氏は「シャーマン」と呼ぶ。それを展示する博物館のスタッフにとっては「座る女」だ(少なくとも今のところは。他にいい呼び名があれば受け付けるそうだ)。

女性は動物の角の上にあぐらをかき、頭を上にして埋葬されていた。動物の歯を100本以上ぶら下げたベルトを腰に巻き、大きな板をあしらった首飾りを着け、肩は短い羽毛のケープで覆われていた。

女性の骨から、身長は150センチほどで、死亡時の年齢は30~40歳であることが明らかになった。中石器時代のヨーロッパには、肌が浅黒く、目の色が薄い人々が住んでいたことはわかっていたが、この女性と同じ墓地で発掘された他の遺骨のDNAからも、それが確認された。

農業はすでに伝わっていた

スウェーデン、ルンド大学の考古学名誉教授であるラース・ラーソン氏は、1980年代初頭に22番を発掘したときのことを覚えている。場所は、スウェーデンの町トレレボリに近いスケートホルムの遺跡だった。スケートホルムでは、紀元前5500~4600年の墓が80以上確認されている。埋葬法は様々で、2人1組だったり、犬と一緒だったり、犬だけがぜいたくな副葬品とともに埋葬されている墓もあった。

だが、22番のように、座った格好で埋葬されていた例は珍しい。その墓はひとつの塊のまま掘り起こされ、そのまま研究室へ運び込まれた。

「スケートホルムで最も発掘が大変な墓だったと思います」とラーソン氏は振り返る。

スケートホルムをはじめ、スカンディナビア半島南部の海岸沿いに残る中石器時代後期の埋葬地は、考古学者から特別な関心を集めている。というのも、新石器時代の農耕民族がヨーロッパ本土へ農業を持ち込んだ後も、1000年近くの間、狩猟採集社会が残っていたためだ。

スカンディナビア半島で農業が遅れて始まったのは、地理的に離れていたからというわけではなさそうだと、ラーソン氏は語る。スケートホルムで発掘された副葬品は、ヨーロッパ本土の農耕社会と交易関係があったことを示唆している。むしろ、彼らは狩猟採集生活を選んでいたのだろう。

「狩猟採集民は文明化されていない人々だと考えられがちです」とラーソン氏。「ですが、狩りをし、採集し、漁をする好条件が整っているのであれば、なぜわざわざ農業に移行する必要があるのですか?」

高い地位にあったことは明らか

骨とDNAを使って体は復元できるものの、当時の社会における彼女の役割については、「特別な存在」以外のことは言えないとラーソン氏は釘を刺す。

トレレボリ博物館長のインゲラ・ヤコブソン氏も同じ意見だ。「副葬品を見れば、彼女が社会のなかで何らかの特別な地位についていたことがわかりますが、それ以上のこととなると何も断定できません」

しかし、ニルソン氏は芸術家として、自分の目に映ったと思われるものに注目した。「様々な解釈ができるでしょうけれど、私の目から見たら、彼女は絶対にシャーマンです。動物の角の上に座った格好で葬られていて、強い印象を受けました。とても重要で、高い位についていたことは明らかです」

頭部については、ニルソン氏はまず元の頭骨をスキャンし、3Dプリンターを使って正確なレプリカを作成した。次に、人種、性別、そして死亡時の推定年齢が骨の構造や皮膚の厚みに反映されるよう、手作業で肉付けをした。

体については、似たような身長と体形の知人を雇って、あぐらをかくポーズをとってもらった。ニルソン氏と同僚のイライン・クムランダー氏、キャスリン・アブラハムソン氏がモデルの体の石膏型を取り、シリコンで成型した。ベルトに使う動物の歯130本など、地元で集めた材料を使って、ヘレナ・ジャエルム氏が服や装飾品を製作した。

「どこかで会ったことがないかしら」

何よりも人の目を引き付けるのは、魅力的で力強い表情だ。

「ここまで個性を持った復元作品を作ることはめったにありません」と、ニルソン氏は言う。「けれども、彼女は特別です。いったんシャーマンだったと決めてみたら、表情を作るのが容易になりました。彼女は顔の筋肉をほとんど動かすことなく、意思を伝えていたように感じます」

「シャーマンは、この世とあの世をつなぐ橋のような存在です。それが表情に出るように注意しました」

博物館長のヤコブソン氏は、復元された女性を最初に見たとき、鳥肌が立ったという。「彼女の瞳には、何か特別なものが宿っていました。本当に傑出していました」

博物館で講師を務めるマリア・ジーボン氏は、像を見たときデジャブのような不思議な感覚を味わったという。「どこかで会ったことがないかしらと思いました。普通とは違う形で彼女のことを知っているような。もしかしたら、遠い知り合いに似た人がいるのかもしれません」

そして、こう付け加えた。「時や場所は違っても、私たちは皆同じ人間です」

(文 Kristin Romey、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年11月14日付]

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