GM、工場再編でEVと大型車生産にアクセル

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コラム(ビジネス)
自動車・機械
北米
2019/12/4 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

米ゼネラル・モーターズ(GM)は米国の生産体制を再編する。セダン系車種を生産する「ハムトラック工場」(ミシガン州)を電気自動車(EV)の専用工場に切り替え、隣接するオハイオ州にEV用の電池工場も新設する。低迷するセダン系の生産は縮小し、EVとピックアップトラックなどの大型車に絞って生産効率を高める。

オハイオ州のローズタウン工場は一部を新興EVメーカーに売却=ロイター

オハイオ州のローズタウン工場は一部を新興EVメーカーに売却=ロイター

全米自動車労組(UAW)と10月に結んだ労使合意内容に基づいて生産体制を見直す。10月下旬まで40日間に及んだ米国工場のストライキを経て、2018年11月に発表した米国4工場のうち3工場の閉鎖の合意をUAWから取りつけた。

既に生産を終了しているメリーランド州とミシガン州の部品工場は計画通り閉鎖する。年間30万台の生産能力を持つオハイオ州の完成車工場「ローズタウン工場」も閉鎖し、施設の一部はEVの新興メーカー「ローズタウン・モーター」に売却した。現在の工場の近隣に車載電池の構成部品「セル」を生産する工場を新設して1000人を雇用する。

GM本社に近いデトロイト中心部にある「ハムトラック工場」は存続が決まった。「シボレー・インパラ」などセダン系の生産を20年1月に終了し、EVのトラック工場に組み替える。メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は「もともと電動トラックをつくる計画があったが、ハムトラックに再投資することで効率的に生産できることが分かった」と説明した。

GMが公表したEVのコンセプトモデル「E-10」

GMが公表したEVのコンセプトモデル「E-10」

UAWとの合意文書には、米国内に77億ドル(約8300億円)を投資することも盛り込んだ。このうち40億ドルを工場の設備更新や改修に充て、9000人を雇用するとしている。対象となる工場や雇用の内訳は不明だが、米国内で一定規模の生産を約束することで労組に理解を求めた。

20年をメドに北米でセダン系車種の販売から撤退する方針を打ち出したフォード・モーターに対し、GMはそこまで思い切った車種の絞り込みは予定していない。ただし、生産の中心は多目的スポーツ車(SUV)とピックアップトラックに移っており、大型車の米国での販売比率は既に8割を超える。

大型車と並行して23年までにグローバルでEV20車種を投入する計画。自動車の環境規制が大幅に強化される中国への対応が中心だが、米国でも大型車のEVをそろえる。今月5日にラスベガスで開いた自動車見本市「SEMAショー」でも、1960年代に人気を博したピックアップトラック「C-10」をモチーフにしたEVのコンセプト車「E-10」を公開した。

19年の米新車販売台数は2年ぶりに前年を下回る見通しだが、売れ筋の「ライトトラック」(SUVを含む)はセダン系などの「乗用車」に比べて販売価格が平均で1万ドルほど高く、利幅も大きい。高収益の大型車の人気が続く間に、次世代エコカーの柱に据えるEVの生産体制を整える。

■EVで省力化、労組は危機感

ゼネラル・モーターズ(GM)と全米自動車労組(UAW)の交渉が難航した最大の理由は雇用保証を巡る主張の食い違いだ。労組は将来の雇用の約束を求めたが、総人件費の高止まりを避けたい会社側は最後まで認めなかった。

モーターと電池で動く電気自動車(EV)はガソリンエンジン車に比べて生産に関わる従業員が少なくてすむ。UAWが12年ぶりのストライキに踏み切ったのは、EVへの生産シフトに伴う人員削減への危機感が大きかった。

UAWは新たな労働協約の概要を説明する組合員向けの資料に「技術の進歩に伴う雇用の維持」と題した一節を加えた。UAWは「EVと自動運転車を増やすGMの計画に懸念を表明」し、会社と組合の同数のメンバーからなる「先進技術委員会」を立ち上げて組合員への影響を定期的に協議するという。

メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)はストライキ解除後の決算会見で「組み立ての作業はEVのほうがずっと単純だ。今後はEVにより多くを投資することになる」と語った。EV生産が本格化すれば追加の人員削減は避けられそうにない。

独フォルクスワーゲン(VW)はEVの生産拡大に合わせて23年までに最大7000人の従業員を削減すると発表した。GMも雇用保証を拒んだことで「市場のレベルに応じて従業員数を柔軟に調整できる」(ディビア・スリヤデバラ最高財務責任者)という。生産現場の「カイゼン」を重ね、従業員の熟練度を上げて生産性を高めるこれまでの車づくりが変わりつつある。

(ニューヨーク=中山修志)

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