【ワシントン=鳳山太成】米通商代表部(USTR)は2日、フランスが導入したデジタルサービス税が米国のIT(情報技術)企業を不当に差別していると断定した調査報告書を発表した。24億ドル(約2600億円)分に相当する仏製品63品目に最大100%の制裁関税を検討する。デジタル課税を巡る国際的な議論が進むなか、先行実施した仏に撤廃を迫る狙いだ。
USTRは「通商法301条」に基づき、仏デジタル税が不公正な慣行かどうかを調べた。報告書では「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)など米IT企業を狙い撃ちにした措置」と認定。利益ではなく売上高に課すなど、国際的な課税ルールにも反するとして制裁を発動すべきだと結論づけた。
追加関税を課す対象としてスパークリングワインやチーズ、ハンドバッグなどを含む品目リストの原案を提示した。対象規模は米企業が被る損害に基づき算定した。公聴会を開いて産業界から意見を募ったうえで発動日や関税の税率などを決める。2020年1月中旬まで意見を募る予定のため、実際の発動はその後になる見通しだ。
シャンパンも制裁関税の対象となる可能性がある=ロイター
米国のモノの対仏輸入額は18年で約530億ドル。今回の制裁規模はこのうち5%にとどまるものの、実際に発動すれば米欧貿易摩擦が一段と激しくなる。トランプ政権は既に欧州航空機大手エアバスへの補助金が不当だとして仏産ワインなどに追加関税を発動済みだ。自動車や農産品の貿易を巡っても対立している。
USTRのライトハイザー代表は声明で「今回の決定は、米企業を差別したり不当な重荷を負わせたりするデジタル税制に米国は行動を取るということを明示するものだ」と強調した。オーストリアやイタリア、トルコにもデジタル税を巡って調査を検討していることを明らかにした。
デジタル課税を巡っては経済協力開発機構(OECD)が10月に原案を示し、20カ国・地域(G20)を中心に20年1月までの大枠合意をめざしている。仏政府は国際的な議論がまとまれば独自のデジタル税を取りやめる方針だが、米政権は制裁関税をちらつかせて速やかな撤廃を求める構えだ。
経済のデジタル化が進むなか、各国は消費地に支店など物理的な拠点を必ずしも持たないIT企業に課税しようと模索している。仏政府は7月、一定の売上高を持つIT企業に対し、ネット事業の売上高から3%を徴収するデジタル税を導入した。トランプ大統領は同月、中国への制裁関税にも適用した通商法301条を使って、仏への対抗策を検討するようUSTRに指示していた。