スパコン「富岳」、速さより使い勝手 富士通が出荷開始

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2019/12/2 22:04
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スパコン「富岳」を構成する計算機(石川県かほく市)

スパコン「富岳」を構成する計算機(石川県かほく市)

富士通は2日、理化学研究所(理研)と共同開発したスーパーコンピューター「富岳」の出荷を始めた。2011年に計算速度で世界首位だった「京(けい)」の後継機となる。富岳の試作機の計算速度は159位だったが、世界一の環境性能や使い勝手の良さを前面に打ち出して顧客を開拓する。

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2日午後、富士通ITプロダクツ(石川県かほく市)から富岳を構成する計算機6台が理研の神戸市の拠点に向けて出発した。今後400台以上をつないで完成させて、21~22年の利用開始を目指す。富士通の時田隆仁社長は「富岳は防災や創薬などに加えて幅広い企業のビジネスに貢献する力を秘める」と語った。

スパコンは気象や防災のシミュレーション、薬や素材の開発などで国の研究機関や大学が利用する。国内スパコン市場は関連ソフトや保守サービスなどを含めて年間千数百億円とみられ、そのうち富士通の受注額は500億円程度のもようだ。

売上高が4兆円弱(19年3月期)の富士通にとって規模は大きくないが、同社が成長を託すデジタル戦略に富岳が重要な役割を担う。そのためスパコンの位置づけを大きく変えた。

まず単純な計算速度を競うことをやめた。スパコンの計算速度を競う11月の世界コンテスト「トップ500」では米IBMの「サミット」が首位になった一方、2台をつないだ富岳の試作機は159位。民主党政権下で「2位ではだめなんですか」と指摘され、予算を削減して完成させた京と比べ、計算速度への執着は薄い。

背景には京のビジネス面での反省がある。京をベースにしたスパコンは、富士通が想定したほど売れなかった。CPU(中央演算処理装置)や基本ソフト(OS)で選択ミスがあったためだ。

CPUの開発では、富士通が熟知する技術を採用したが「互換性が乏しくガラパゴスになった」(担当者)。京では他社のソフトをそのまま使えないことが多く、利用者が増えなかった。

富岳では利用者の習熟しやすさやソフトの互換性を意識して技術を選んだ。CPUはスパコン向けで採用を増やす英アーム・ホールディングスの設計仕様を基に開発した。OSには企業で広く使われる米レッドハット版のリナックスを採用。他社との互換性を強めた。AI(人工知能)専用の計算機能も搭載し、特別なプログラムを習熟しなくても学習作業を短時間で済むようにした。

もう一つ意識したのが環境性能だ。富岳の試作機は環境性能を競うコンテストで世界1位を獲得した。スパコンは多くのコンピューターをつないで性能を高めるため消費電力が大きい。ただ大量の電力供給には限度があるため、省エネ機能がスパコンの性能を左右する大きな要素となっている。富岳は京の最大100倍のソフト稼働性能を、約3倍の消費電力で実現することを目指す。

競合のIBMは米金融大手JPモルガン・チェースなどの企業にスパコン活用法を提案し、実績を上げる。富士通は富岳をベースにしたシステムで世界中で顧客の開拓を急ぐが、使い勝手の良さなど顧客への提案力が今後の課題となる。(島津忠承)

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