イラク首相の後任選びで米・イラン綱引き 政治空白でIS伸長も

中東・アフリカ
2019/12/2 20:00
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【カイロ=飛田雅則】イラク国会は1日、アブドルマハディ首相の辞任を承認した。サレハ大統領は後任の人選を本格化させる。同氏には経済支援と宗教を通じ影響力を強めるイランと、同国を敵視する米国がそれぞれ働きかけるとみられ、時間がかかりそうだ。政治空白が長引けば「イスラム国」(IS)などの過激派組織が再び台頭する余地を与えかねない。

イラクでは反政府デモが続いている=AP

イラクの首相は行政権を握るだけでなく国軍の最高司令官でもある。

辞任の理由である首都バグダッドなどイラク各地での反政府デモは10月に始まったが、なお続いている。AP通信によると治安部隊との衝突でこれまでに計400人以上が死亡した。デモ参加者が抗議する内容は高い失業率、電力など公共サービスの不足、政権内の汚職などだ。アブドルマハディ政権は有効な打開策を打ち出せなかった。

今回のデモの特徴は隣国イランへの抗議を強めていることだ。「腐敗した親イランの政治家がイラクの石油の富を横領している」などと主張。イスラム教シーア派の聖地、中部ナジャフのイラン領事館は11月27日に続き、1日にも放火された。11月初めには別のシーア派聖地、中部カルバラでイラン領事館が暴徒化した人々に襲撃された。

イラクの人口の多数はシーア派だ。2003年に米軍がフセイン独裁政権を倒すと、シーア派のイスラム法学者が支配するイランがインフラ整備など経済支援を繰り出し、関係が好転した。北西部を中心にイラクを侵食したISの掃討作戦ではイラン革命防衛隊の訓練を受けたシーア派民兵らが大きな力になった。

一方、米国は5千人規模の米軍兵士をイラクに駐留させている。名目はイラクの治安維持やIS掃討だが、実際はイランを巡る安全保障関係の情報収集が大きな任務だとされる。米国はイランが核爆弾を製造し、中東地域でのパワーバランスの変更を狙っていると疑っており、イスラエル、サウジアラビアなど中東の同盟国とともにイランの影響力の抑制を目指す。

イランはシーア派勢力を通じ、イラク内政への発言力を強める狙いだ。一方、米国はイラク国民の一部に広がる反イラン感情を追い風に、親米傾向の人物を首相に据えようとするとみられる。

次期首相を擁立するための協議は難航が予想される。18年5月の総選挙から、アブドルマハディ政権の発足まで半年近くかかった。政権の発足が遅れれば、デモ参加者が求める公共サービスの改善は進まない。デモが収まる見通しは立たない。

混乱に乗じてISなどの過激派組織が勢力を強める懸念もある。10月下旬に指導者のバグダディ容疑者が米軍に殺害されたISは報復を宣言している。AFP通信によると、バグダッドのシーア派地区で11月26日、6人が死亡する複数の爆弾テロが発生した。ISが犯行声明を出した。

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