トルコ、1年ぶりプラス成長 雇用は低迷続く

トルコショック
中東・アフリカ
2019/12/2 18:30
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トルコは18年の通貨危機以降続く経済の低迷が、国民生活にも影を落とす=ロイター

トルコは18年の通貨危機以降続く経済の低迷が、国民生活にも影を落とす=ロイター

【リヤド=木寺もも子】トルコ統計局は2日、2019年7~9月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比0.9%増だったと発表した。1年ぶりにプラス成長に戻ったが、過去1年間で失業者が約100万人増えるなど18年の通貨危機の傷は癒えていない。3日にロンドンで開幕する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では米欧がトルコによるシリア侵攻を非難する展開が予想される。外交・安保面のリスクも改めて意識されそうだ。

GDPの6割を占める個人消費は前年同期比1.5%増にとどまり力強さを欠いた。官民のインフラ投資や設備投資を示す総固定資本形成は12.6%減と大きく落ち込んだ。公共工事の延期・凍結が相次ぎ、企業活動が停滞している現状を裏付けた。

米国人牧師の拘束問題を巡る米国との対立から発生した18年の通貨危機で、トルコは通貨リラの対ドル相場の急落と、輸入品の価格高騰に伴う物価の大幅な上昇に見舞われた。18年10~12月期に始まった3四半期連続のマイナス成長を脱し、景気はひとまず底を打った形だが、雇用環境は悪化が続いている。

「もう5カ月も仕事がない」。11月下旬、最大都市イスタンブール郊外の職業紹介所を訪れた塗装工、ムスルム・オゼルさん(52)は嘆く。住宅の新築やリフォームなどの仕事が激減し、自営業者向け年金の保険料を支払うのが難しくなっているという。

統計によると、直近の8月の失業率は14%で、1年前から3ポイント悪化した。15~24歳の若年失業率は27%に達し、統計をさかのぼれる1988年以降で最悪の水準だ。

失業者数は465万人と1年前から98万人も増えた。15歳以上の労働力人口約3300万人の約3%に相当し、貯蓄の乏しい低所得世帯に与える影響は甚大だ。

「不動産、自動車、家電の(売り上げ)増加は景気回復のしるしだ」。エルドアン大統領は販売面で薄日の差し始めた業種を取り上げて回復ぶりを強調する。ただ、国際通貨基金(IMF)の成長率予測は19年が0.2%、20年でも3%どまりで、7%台だった17年には遠く及ばない。

専門家は「若年人口の増加が続くトルコでは失業者を吸収するには4%近い成長が必要だ」(バフチェシェヒル大のセイフェッティン・ギュルセル教授)と指摘しており、雇用の改善までには時間がかかりそうだ。

10月、トルコは国境地帯からテロ組織とみなすクルド人勢力を排除するためシリア北部に軍事侵攻した。国内世論の高い支持とは裏腹に、作戦は「狂気の沙汰」(マクロン仏大統領)など国際的な批判は強い。

トルコも加盟するNATOは3、4日にロンドンで首脳会議を開く。シリア情勢を巡る英独仏との4カ国首脳会談も計画されている。エルドアン氏への非難が集中すれば、ロシアへの接近などトルコ固有の外交・安保リスクが意識され、1ドル=5.7リラ台で小康状態にあるリラの下落につながり、トルコ景気の回復に水を差す恐れがある。

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