メキシコ左派政権1年、経済政策転換で景気後退に
支持率にも陰り

中南米
2019/12/1 19:00
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【メキシコシティ=丸山修一】メキシコで左派のロペスオブラドール政権が発足して12月1日で1年を迎えた。成長を支えた対外開放・民間重視の経済政策を否定し、大型プロジェクトを次々と中止した。方針変更を嫌気した民間企業は投資に慎重姿勢を強め、景気は後退局面だ。支持率には陰りも見え始めたが政権に危機感は薄く、成長回復への道筋は見えない。

「景気後退入り」。11月26日の地元紙を悲観的な見出しが飾った。前日に国内総生産(GDP)の実績値が改定され、2018年10~12月期から3四半期連続で成長率がいずれも前期比0.1%のマイナスとなった。「景気後退局面入りしたことが公式に認められた」(バンクオブアメリカ・メリルリンチ)

メキシコ銀行(中央銀行)は同27日、19年の経済成長予想をマイナス0.2~プラス0.2%とし、以前から0.5ポイント引き下げた。金融危機の影響があった09年以来の低水準となる。

米国向けの輸出基地として外国から投資を呼び込み、雇用や消費を増やして安定した成長を遂げる――。1年前までのメキシコ経済は国際社会でこう認識されてきた。ロペスオブラドール氏はそんな姿を大きく変えた。

前政権下で国内外の投資家から資金を調達して工事が始まっていた首都新空港を中止。債務超過の国営石油会社の投資不足を埋めるため外国企業に門戸を開いた油田鉱区入札を取りやめた。開発の遅れる南部を中心にした経済特区構想も廃止した。ロペスオブラドール氏は民間主導の新自由主義的な経済政策が「汚職と格差の根源だ」と否定する。

前政権までは外資誘致や自由貿易の拡大に重きを置き、歴代大統領は世界を飛び回った。ロペスオブラドール氏は就任以来、外遊はゼロだ。6月の大阪での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)や9月の国連総会も欠席した。国境を接するトランプ米大統領との面会もない。不法移民対策や麻薬カルテルのテロ組織指定などで対米関係は不安定だ。関税引き上げへの懸念もくすぶる。

これが経済活動に跳ね返っている。1~9月には145万人が失業を理由に年金基金から掛け金を引き出した。前年同期に比べ14%も増えた。1~10月の新車販売は8%落ち込んでいる。

ロペスオブラドール氏の支持率にも陰りが見え始めた。大手民間調査機関ミトフスキーによると「支持する」との回答は2月の67.1%をピークに60%台を維持してきたが、11月に50%台に落ち込んだ。治安と経済の悪化が背景にある。

ロペスオブラドール氏も11月27日の会見で「望んだような成長ができていない」と認めた。北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定の批准を米に強く要請し続けているほか、総額8590億ペソ(約4兆8千億円)もの民活型インフラ計画を発表し、政権発足当初よりも民間企業寄りの柔軟な姿勢もみせる。

大手格付け会社の米ムーディーズ・インベスターズ・サービスは計画発表後の11月28日のリポートで「予定通り計画が実行されれば経済成長率が改善する可能性がある」と指摘した。「最も重要なのは民間部門に広がった投資への否定的判断を少しでも改善することだ」と注文をつけた。

メキシコには自動車産業を中心に1100社を超える日本企業が進出している。英国やブラジルを上回る水準だ。ロペスオブラドール政権が投資家の信頼を回復する政策変更に動かないようだと、影響は避けられない。

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