独SPD党首選、連立懐疑派が勝利 メルケル政権打撃

ドイツ政局
2019/12/1 18:00
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独社民党の党首選挙で勝利したワルターボーヤンス氏(左)とエスケン氏=ロイター

独社民党の党首選挙で勝利したワルターボーヤンス氏(左)とエスケン氏=ロイター

【ベルリン=石川潤】メルケル政権の連立与党で第2党のドイツ社会民主党(SPD)は11月30日、次の党首を決める党員投票で連立懐疑派のワルターボーヤンス氏とエスケン氏のペアが勝利したと発表した。連立維持派との決選投票だったが、党勢の退潮が止まらないなか、党員は現状路線にノーを突きつけた。SPDが連立政権にとどまるかどうか極めて不透明となり、メルケル政権の存続基盤が大きく揺らぎ始めた。

現在の政権はメルケル首相が所属する中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と、SPDが連立を組む。仮にSPDが政権を離脱すれば、メルケル政権は少数与党内閣となるか、2021年秋に予定する連邦議会選挙を前倒しするかなどの選択を迫られる。

SPD党首選は5月の欧州議会選の敗北を受けて辞任したナーレス党首の後任選びで、今回から共同党首制を視野に2人一組での立候補が認められた。6組が名乗りをあげた10月の第1回党員投票では過半数を獲得した候補がなく、上位2組の決選投票となっていた。

決選投票の結果、第1回投票で首位だった連立維持派のショルツ財務相らのペアは45.3%にとどまり、ほとんど無名だった西部ノルトライン・ウェストファーレン州の元財務相ワルターボーヤンス氏とエスケン下院議員のペアが53.1%の票を得て勝利した。メルケル政権で要職を務めるショルツ氏らが予想外の敗北を喫し、ドイツ政界では「完全にあっけにとられた」(野党・自由民主党のリントナー党首)などと衝撃が広がった。

「CDU・CSUと話を始めなければならない」(エスケン氏)。勝利した2人は30日夜、即時の連立離脱には否定的な考えを示した。SPDは6日からの党大会で、2人を共同党首として正式承認する見通し。連立政権継続の是非も党大会で改めて議論する。

勝利した2人は連立懐疑派とされる。ただ現在の連立協定を見直し、より思い切った気候変動対策、道路や学校などへの投資、最低賃金の引き上げなどの政策が実現できるなら、政権にとどまることも排除しないという立場だ。

一方、CDU・CSU内では年金制度改革などでこれまでもSPDに譲歩し続けてきたとの意見が強い。連立協定の見直しにはCDUのクランプカレンバウアー党首らが反対の姿勢を示しており、ハードルは高い。連立与党はSPDの党大会後、速やかに今後のあり方を協議する方向で調整を始めた。

SPDは5月の欧州議会選で大敗し、その後の州議会選挙でも事実上全敗するなど、党勢の退潮に歯止めが掛かっていなかった。二大政党の一つとされながら、支持率は緑の党にも抜かれ、極右、ドイツのための選択肢(AfD)と3位を争うまでに低迷していた。

ショルツ氏に対する不信任投票――。独公共放送のARDは投票結果に対してこんな見方を示した。連立政権への参加で中道左派政党としての特色を打ち出しにくくなっているとの不満が、党内の左派や青年組織などを中心に広がっていた。副首相兼財務相として政権で重責を担ってきたショルツ氏の責任を問う声もくすぶり続けていた。

メルケル政権の求心力が一段と低下し、ドイツで政治空白が生まれることは避けられない。欧州の盟主とされるドイツの意思決定が滞れば、マクロン仏大統領が求める欧州連合(EU)改革や温暖化ガス削減、景気対策などの課題が山積する欧州政治全体にも影響が広がりかねない。

大連立政権を長く続けた結果、中道右派のCDU・CSUと中道左派のSPDの政策がいずれも中道寄りに傾き、極右や緑の党に躍進の余地を与えたとの見方もある。SPDだけでなくCDU・CSUでも党の原点回帰を求める声が高まっており、今回の党首選の結果はメルケル政権の中道路線の限界を示した形だ。

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