北海道がIRの誘致見送り、成長シナリオに暗雲

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2019/11/29 19:37
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北海道の鈴木直道知事は29日の道議会本会議で、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致申請を見送ると表明した。道の試算で開業時の投資額が2800億~3800億円に達するなど、道内経済活性化の起爆材として期待されてきた。2021年7月までの国への申請を断念したことで、北海道の成長シナリオも再考を迫られる。

鈴木知事は「熟慮の結果、IR誘致に挑戦したいとの思いに至った」とした一方で「候補地は希少な動植物が生息する可能性が高く、区域認定までの限られた期間で環境への適切な配慮を行うことは不可能」と見送りの理由を説明した。

北海道は道内でIR誘致に名乗りを上げた3地域のうち、苫小牧市内を優先候補地に選んでいる。新千歳空港(千歳市)に近く広大な用地も確保でき、最も大きな経済効果が見込めると判断したからだ。その上で誘致の是非を検討してきた。

北海道は施設全体の年間売上高を1560億円と試算。「宿泊客増など観光産業の拡大が期待できる」(地域研究工房の小磯修二代表理事)との期待もあった。海外の有力事業者が続々と参加する意思を明らかにし、苫小牧市議会や道内経済団体が誘致を求める決議や宣言を相次いで知事に突きつけてきた。

ただ、鈴木知事は足場を固めきれなかった。最大会派の自民党・道民会議も意見を集約できず、誘致を表明しても議会で可決できるかが不透明に。2~3年はかかる環境影響評価(アセスメント)も手つかずで、申請期間までに終わらないという懸念も浮上。道民向け意識調査でも不安視する意見が多く、申請の見送りに追い込まれた。

経済界には落胆の声が広がる。北海道経済連合会の真弓明彦会長は「北海道経済への様々な波及効果を考えると、大きな痛手」とコメント。苫小牧商工会議所の宮本知治会頭らは「議会の政争の具にされた」と指摘。道庁の姿勢にも「前向きな気概を感じることができなかった」と断じた。

国が求める21年1~7月の申請に応じた地域のうち、認められるのは最大3地域。訪日外国人受け入れの実績や地域バランスからも、北海道は有力候補となると目されていた。自民党・道民会議内で推進派だった藤沢澄雄道議は「挑戦するなら今で、(知事の判断は)話にならない。IR事業者は逃げていく」と無念さをにじませた。

ただ、鈴木知事は誘致見送りは断念ではないとも強調する。誘致見送り表明時の文言には「来るべき時には挑戦できるよう、所要の準備をしっかりと進める」と盛り込んだ。念頭に置くのは、IR実施法が定める再チャンスに応じる可能性だ。

施設は当面国内で3カ所を上限とするが、最初の区域認定から7年後に見直すとしている。仮に2021年に選べば、28年に再チャンスが到来する可能性は残る。

次回も時間切れはありえない。環境アセスや事業者選定などを一歩一歩、前に進める努力を道は重ねる必要がある。

(高橋徹、塩崎健太郎)


■北海道の未来に目線を


札幌支社編集部長 川原健一


苫小牧統合型リゾート推進協議会が構想する「HOKKAIDO WHITE IR」のイメージ図

苫小牧統合型リゾート推進協議会が構想する「HOKKAIDO WHITE IR」のイメージ図

 北海道の未来を真剣に考え抜いた末だったのだろうか。鈴木直道北海道知事は29日、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致見送りを表明した。議論が分かれるのは仕方がないところだが、準備不足で時間切れに追い込まれてしまったように見えて仕方が無い。
 鈴木知事が断念の理由とした候補地周辺の環境への影響は、以前から指摘されていたことだ。ここにきて「時間が無い」という前に、あらゆる情報にアクセスし、衆知を集めて議論を尽くしたのだろうか。ギャンブル依存症対策を含む「マイナス面」は本当に解決策を見いだすことができないのだろうか。
 決断の責務に背を向けたのは、統一地方選でIR誘致を公約に掲げた自民党・道民会議も同じだ。知事や議会に誘致を強く訴えた経済界は、結束したものの影響力を発揮できなかった。北海道をリードすべき各界が、そろって対話不足だったことは否めない。
 実際、断念するにはもったいない数字が並ぶ。北海道の試算では、IR誘致による経済効果は直接投資で3000億円前後、税収増が最大で年間234億円、新規雇用が2万1000人だ。財政難の道にとって、少子高齢化対策や1次産業の振興にのどから手が出るほど欲しかったはずだ。
7空港の一括民営化や北海道新幹線の札幌延伸、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)、北広島市に建設が予定されるボールパーク……。多額の費用をかけて道内で進む事業と連携できれば、その何倍もの相乗効果が得られるはずだった。
 「北海道はポテンシャルがあってすばらしい」。経済界のある幹部は、こう褒められることに心穏やかではないという。豊かな食や観光資源は来道者を魅了するが、潜在価値にあぐらをかき、素材を磨き上げる努力を忘れている、という皮肉にとれるからだ。IRという魅力ある素材をあきらめるのであれば、代案を道民に示し、北海道ブランドの向上に努めるべきだ。
 ピーク時に400万人弱いた北海道の生産年齢人口は2020年に300万人を割り込み、45年には200万人を下回る見通しだ。すでに顕在化している人手不足、需要不足が全国に先駆けて進むこの北海道で、今年成人を迎えた若者が働き盛りの45歳を快適に迎えられるのだろうか。足元だけでなく、未来にも目を向けた政策を遂行しない限り、ピンチはピンチのままだ。
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