未完のレース

フォローする

海外での指導で見つめ直した柔道 東京五輪に生かす
柔道 福見友子(最終回)

Tokyo2020
(1/2ページ)
2019/12/4 5:30
保存
共有
印刷
その他

福見友子(左)はロシアと英国での経験を指導に生かしている(2019年10月、東京都品川区のJR東日本柔道部柔道場)

福見友子(左)はロシアと英国での経験を指導に生かしている(2019年10月、東京都品川区のJR東日本柔道部柔道場)

柔道女子48キロ級の福見友子(34)は、崖っぷちからの大逆転で2012年ロンドン五輪の出場を果たした。だが、女王・谷亮子(44、旧姓・田村)が5大会にわたって守り続けたメダルを逃してしまう(5位入賞)。翌13年引退し、指導者の道に進む。最終回は日本女子代表のコーチとして20年東京五輪を迎える福見の心情を届ける。(前回は「同じ相手に3連敗 『負ける覚悟』から柔道伸びる」

◇   ◇   ◇

12年のロンドン五輪前年、48キロ級で代表の座を争うライバル・浅見八瑠奈(31)に3連敗を喫し、福見友子は追い込まれていた。ところが、五輪の望みが消えた、と覚悟を決めたこの時期、深い充実感を噛みしめていたという。

「相手の対策を練り、勝負の裏の、さらに裏をかく、といった戦術の部分でいつの間にか苦しくなっていたんですね。それが、崖っぷちに立ったら柔道が純粋に楽しくなってどんどん成長している気がしました。不思議な感覚でした」

土壇場ともいえる時期を、福見は今、つらい思い出としてではなくむしろいとおしそうに、笑顔でそう振り返る。

代表の座が遠ざかったがゆえに、柔道を純粋に楽しんでいた福見と、直接対決でライバルを破りポイントを順調に重ねていた浅見。五輪イヤーが始まると、流れはゆっくり福見に傾き始めた。

1月、ワールドマスターズ決勝で浅見を破って初優勝を果たすと、浅見がケガで欠場したグランドスラムパリ大会でも優勝。代表争いは5月、最終選考会となる全日本選抜柔道体重別選手権で決着する。優勝候補筆頭の浅見が、初戦で高校生・岡本理帆(藤枝順心高校)に敗れる波乱が起きる。一方福見は、浅見を破って決勝に進出した岡本を判定(3-0)で下して大会4度目の優勝。大逆転で五輪代表に選ばれた。

■「いつも通り」では五輪で勝てない

ロンドン五輪準決勝で敗れ、ぼう然とする福見(右)

ロンドン五輪準決勝で敗れ、ぼう然とする福見(右)

02年、07年と、女王・谷亮子に勝ちながらその2勝とも五輪にはつながらなかった。7歳で初めて見たバルセロナから憧れ続けた五輪に、20年をかけ、ずい分と遠回りをしたが、ようやくたどり着いた。北京五輪以降、外国選手に敗れたのはただ1回のみで、その戦績から金メダル間違いなし、と筆頭候補にあげられロンドンを迎える。しかし準決勝で敗退し、谷がバルセロナから北京まで5大会にわたって死守してきた48キロ級のメダルも逃してしまった。平常心で挑んだはずだった。しかしその平常心こそ反省すべきだったと敗因を見つめる。

「いつも通り臨もうと、冷静で落ち着いていたとは思います。でも、メダルを取れずに終わった時、4年に一度の舞台は、いつも通りといった精神状態で勝てる場所ではないのだと分かった気がしました。いつも強い者ではなく、この日一番強い者が勝つ。一生悔いが残る試合をしてしまった」

3度目の挑戦でようやく出場した五輪でメダルを逃した柔道家は、ロンドン翌年の春、現役引退を発表する。全日本柔道連盟では同時期、日本のスポーツ界全体を揺るがすパワーハラスメントや不透明な選考といった問題が表面化し、「アスリートファースト」の観点から改革が進められていた。福見は全日本の女子コーチ就任を打診されていた。しかし縁あって、先に依頼を受けていたロシア女子代表の臨時コーチに就くため、モスクワへ単身で渡った。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

関連コラム

電子版トップスポーツトップ

未完のレース 一覧

フォローする
福見友子(左)はロシアと英国での経験を指導に生かしている(2019年10月、東京都品川区のJR東日本柔道部柔道場)


 柔道女子48キロ級の福見友子(34)は、崖っぷちからの大逆転で2012年ロンドン五輪の出場を果たした。だが、女王・谷亮子(44、旧姓・田村)が5大会にわたって守り続けたメダルを逃してしまう(5位入賞 …続き (12/4)

09年世界選手権で福見(上)は初出場初優勝を果たす=ロイターロイター


 柔道家、福見友子(34)は2007年世界選手権の会場で、ライバル・谷亮子(44、旧姓・田村)の優勝を見届け涙を流した。改めて谷の強さを感じ、オリンピックでの金メダルを目指してさらに厳しい稽古に臨む。 …続き (11/27)

福見友子は子どものころから「五輪で金メダル」と思っていた(2019年10月、東京都品川区のJR東日本柔道部柔道場)


 柔道女子日本代表でコーチを務める福見友子(34)が柔道に興味を持つきっかけは1992年バルセロナ五輪だった。女子の柔道を伝えるテレビの画面に目を奪われたという。そこで最も輝いていたのは、その後幾度と …続き (11/20)

ハイライト・スポーツ

[PR]