国連機関、神戸に拠点 SDGs貢献スタートアップ募る

2019/11/28 20:10
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世界各国や他の国連機関の支援依頼を受けて援助事業を展開する国連プロジェクトサービス機関(UNOPS、ユノップス)は28日、スタートアップの育成拠点を神戸市に設けると発表した。「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成につながる先進技術を持つ企業を国内外から募り2020年夏に開設する。小規模でも国連のプロジェクトで自社技術が活用される道が開かれ、神戸のスタートアップ支援は新段階を迎える。

覚書に署名するユノップス事務局長のグレテ・ファレモ国連事務次長(左)と神戸市の久元喜造市長(28日、東京都渋谷区)

覚書に署名するユノップス事務局長のグレテ・ファレモ国連事務次長(左)と神戸市の久元喜造市長(28日、東京都渋谷区)

開設するのは、技術力のあるスタートアップ企業を中心に集める「グローバルイノベーションセンター(GIC)」。同日、神戸市・兵庫県と覚書(MOU)を締結した。市内の既存施設に開設する方向で、約300平方メートルの広さを確保する。

ユノップスはまず貧困から引き起こされる人道問題や、環境負荷低減などSDGsに関わる課題の解決策を公募する。技術や開発能力、実効性などに基づいて入居企業を選定。既存技術を生かした新事業を生む可能性も評価基準に入れる。

初年度は15社程度、3年間で45社の入居を見込む。入居人数は年間40~50人を想定。市と県が賃料や光熱費などを補助する。1年間の期間限定で、その間にユノップスから技術助言や支援先となる現地のニーズ調査などで協力を受ける。20年春にも公募し夏ごろの入居開始を目指す。

入居企業は3カ月ごとに成果指標(KPI)を設定し、ユノップスや神戸市が達成状況を評価。その成果が実際の支援事業に役立つかを見極めたうえで、年5社程度の技術を国連プロジェクトで採用する方針だ。専任職員は約5人を配置予定で、神戸市からも人員を派遣する。

ユノップスが神戸市への拠点開設を決めたのは、同市が取り組んできたスタートアップとの協業や支援、その継続性などを評価したためだ。

例えば18年に始めた行政課題の解決に取り組む「アーバンイノベーション神戸」。スタートアップと新サービス開発で協業する事業で、1年で6社7件を採用した。米有力ベンチャーキャピタル(VC)と組む起業支援事業も17年から開き、2年連続で海外からの応募が国内を上回っている。

ユノップス事務局長を務めるグレテ・ファレモ国連事務次長は記者会見で「神戸市にはイノベーションを起こす文化と知見がある。スタートアップ誘致の実績があり、世界にネットワークが開かれている」と強調。世界規模の課題に取り組むうえで「信頼できるパートナーだ」と評価した。

GICは世界3カ国目で、アジアでは初。18年に中米カリブ海の島国アンティグア・バーブーダ、今年10月にスウェーデンで開設された。韓国などアジア各国も候補となる中、神戸市が誘致を成功させた。久元喜造市長は「優秀な人材が世界から集まり、イノベーションが生まれる環境が整った」と力説する。

市内には農業センサー開発などを手掛けるMomo(モモ)や医療関連などSDGsの課題解決につながるシーズを持つ企業が多い。国連調達に参加できれば世界での成長につながる。国内外の若手企業家が集うことで、新たなアイデアが生まれやすい環境となり「市経済の活性化にも寄与する」(市新産業課)。

国連プロジェクトに直接つながる窓口が日本に生まれた意義も大きい。外務省によると17年の国際機関による資材などの調達規模は約186億ドル(約2兆円)。ただ、日本企業からの調達は1.7億ドルで全体の0.91%と世界34位にとどまる。

国際機関の調達に関する日本企業の認知度が低いほか、英語での書類作成や契約交渉が煩雑なことも要因だ。だがGICでは神戸市など日本の自治体が運営に加わり、一定の相談にも対応できる。

来年、阪神大震災から25年の節目を迎える神戸にとっても新たな力となる。市の人口減は進んでいるが、イノベーションを起こす人材を安定して獲得・育成できれば、世界の都市間競争に勝ち抜く策として期待できる。

(沖永翔也)

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