「富裕層」の申告漏れ最多、1年で763億円 国税庁調査

2019/11/28 16:00
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国税庁は28日、2019年6月までの1年間(2018事務年度)に実施した所得税の調査結果を発表した。株や不動産などの大口所有者である「富裕層」に対し、18事務年度には5313件の調査を実施し、85%にあたる4517件で申告漏れなどがあった。申告漏れ所得の総額は763億円で、追徴税額は203億円と17事務年度から約15%増えた。

いずれも統計を取り始めた09事務年度以降で最高だった。海外で投資をした人の申告漏れや追徴税額が増えたことが理由とみられる。

同庁は資産運用の多様化や国際化などを背景に富裕層を対象に積極的な調査を実施している。富裕層の基準については調査に支障があるなどとして明らかにしていない。

同庁によると、09事務年度は3061件の調査を実施、申告漏れ所得が374億円だった。10事務年度には調査件数は4793件に増え、申告漏れ所得も500億円に達した。

11事務年度以降は申告漏れ所得は300億円台にとどまったが、15事務年度は516億円、16事務年度は441億円、17事務年度は670億円に達した。

17事務年度と18事務年度は調査件数も5千件を超え、18事務年度は初めて700億円を超えた。

同庁は18年秋には日本人や日本の法人などが海外64カ国・地域に持つ約55万件の金融口座情報を入手。租税回避地(タックスヘイブン)も含まれ、富裕層の海外資産の把握に力を入れている。

一方、インターネットを通じた物品販売や広告などで収入を得ている個人の申告漏れ所得は264億円。追徴税額は58億円で、公表を始めた15年度以降で最高だった。

富裕層以外を含めた全体の所得税の申告漏れ総額は9041億円で、17事務年度の9038億円と同水準だった。税務調査などは計約61万件実施。このうち6割の約37万件で申告漏れなどが見つかり、全体の追徴税額は約1195億円だった。

海外当局との情報交換、証券会社の調書で株取引把握 個別の調査事例も明らかに

国税庁は調査結果の発表に合わせ、調査事例の詳細を明らかにした。海外の税務当局と金融口座の情報を交換する新制度(CRS)を活用した例などを紹介。地価の高騰を背景に土地売買で得た1億円以上の所得を申告していなかった事例のほか、証券会社が国税庁に提出した支払い調書から大量の株式売買を把握した事例なども公表した。

■海外取引事案「新制度が威力を発揮」

国税当局は18年秋に始まった各国の税務当局と金融口座情報を交換するCRS(共通報告基準)という新制度を積極的に活用して調査を実施している。大阪国税局はCRSなどで得た情報を活用して海外預金の利子の申告漏れを把握し、追徴課税につなげた。

調査対象者の男性は国外に預金口座を複数保有していた。大阪国税局はCRSなどで得られた情報をもとに税務調査を実施。調査の結果、一部の預金口座の存在を認めたが、その他は認めなかった。CRS情報で得られた口座情報を活用して追及した結果、意図的に海外預金の利子を申告していなかった事実を認めた。申告漏れ所得の総額は約5500万円で重加算税を含めた追徴税額は約2700万円だった。

■土地の譲渡「地価高騰で多額の利益」

全国の路線価は4年連続で上昇している。大阪国税局が手掛けた事案では地価が高騰している地域での土地売買で多額の利益を得ていたが、意図的に申告していなかった事例があった。

不動産仲介業を営む調査対象者の男性は、土地の所有者から売却先を探す依頼を受けた。男性は近辺の地価高騰を踏まえて提示された金額よりも高値で売却できると考えて、いったん自身で土地を購入した。その後、提示された金額よりも1億円以上高い値段で法人に転売して利益を得ていたという。確定申告は行っていたが、税負担を免れるため意図的にこの取引については申告していなかった。申告漏れ総額は約3億6千万円で、重加算税を含めた追徴税額は約1億3千万円となった。

■多額事案「証券会社の調書で多額の株式売買を把握」

申告漏れ所得金額は10数億円に上り、追徴税額が数億円という多額事案もあった。

ある国税局が手掛けた事案では、調査対象者の男性が証券会社を通じて株式を売却していた。証券会社は株式の売却額や株数などを記載した書類(株式等の譲渡の対価等の支払調書)を国税当局に提出する必要がある。国税当局はこの調書から男性が大量に株式を売却している事実を把握した。調査の結果、売却株数のうち一部しか申告されていないことが判明し、男性は修正申告を行ったという。

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