風力を貨物船の推進力に 金沢工業大が帆の素材を開発

2019/11/28 4:00
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貨物船に帆を取り入れ、風力エネルギーを推進力に変える研究に金沢工業大学の開発した複合材が貢献している。商船三井と大島造船所が中心の「ウィンドチャレンジャープロジェクト」の一環で、重油を使った輸送から環境負荷の小さい輸送を実現し、温暖化ガスの削減につなげる。10月に基本設計を終え、2022年には帆をもった大型船舶が誕生する見通しだ。

硬翼帆を備えた船舶のイメージ

硬翼帆を備えた船舶のイメージ

帆は4枚のパネル部分からなり、船の先端に設置される。高さは約50メートル、幅は約20メートルで5段階に伸縮する。コンピューターが風の強さに応じて自動で帆の角度を調整し、海風を受けてヨットのように進む。風力で足りない力は従来通りエンジンで補う。

帆に必要になるのは、軽く、腐食に強く、強風でも耐えうる丈夫な素材だった。素材開発で大きく貢献したのが、金沢工業大の革新複合材料研究開発センターだ。白井武広研究員らはガラス繊維や樹脂を複合した繊維強化プラスチック(FRP)の導入を提案した。

帆を1本立てた場合、日本と北米を結ぶ航路では年間で約8%の温暖化ガスの削減を見込む。日本とオーストラリアでは約5%削減できる。船舶による海洋汚染の防止に取り組む国際海事機関は、50年までに海事分野での温暖化ガスの排出量を08年の半分に減らすとの目標を定めている。

3月にはシミュレーターを使い、乗組員が問題なく出入港できるか試した。検討を重ね、10月には一般財団法人・日本海事協会から帆を利用した設計について基本承認を得た。今後は帆に使う材料など細かい項目を詰め、造船にとりかかり22年の就航にこぎ着ける計画だ。

商船三井は東北電力とも共同で、石炭輸送船に帆を備えた船の導入を検討する。商船三井の担当者は「まずは帆は1本から。将来的には帆を何本も立てることで、エネルギーの重油依存から抜け出し、温暖化ガスの削減につなげられるかもしれない」と意気込む。

プロジェクトは09年に東京大学が主催した産学協同研究プロジェクト「ウィンドチャレンジャー計画」としてスタートし、13年から国土交通省の補助金の採択事業となった。研究を受け継ぐ形で、18年からは商船三井と大島造船所が帆の開発を進めていた。

(前田悠太)

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