韓国、解決へ法整備探る 元徴用工訴訟、原告は反発
12月の日韓首脳会談にらむ

日韓対立
2019/11/27 17:30
保存
共有
印刷
その他

【ソウル=恩地洋介】韓国で日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟の解決策を巡り、法整備による打開を探る動きが出ている。文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が、日韓の企業と個人から寄付金を募って基金を創設する法案を示した。しかし、27日に記者会見した原告側は同案への反対を表明し実現は見通せていない。日韓が開催を調整する12月の首脳会談までに、韓国側が調整をどの程度進められるかが焦点だ。

元徴用工問題を巡る文喜相国会議長の案に反対する原告支援団体(27日、ソウル)

文議長が示した法案は、日本企業による賠償の代わりに基金が元徴用工に支給金を払う「代位弁済」の形式をとる。韓国メディアが報じた法案骨子によると、日韓の企業と個人から寄付金を募ってつくる基金の規模は3千億ウォン(約280億円)。原告と未提訴の元徴用工ら約1500人を支給対象に想定する。

申請期限は1年半で、それ以降は企業への請求権が消滅する。財団の運営費は韓国政府が年約50億ウォンを負担するほか、元従軍慰安婦を支援する財団に日本政府が拠出した10億円の残金約6億円相当を移管することも検討する。文氏は27日までに、この基金案を与野党議員や元徴用工関連団体に説明した。

韓国政府は文議長案に直接関わっていない姿勢を取るが、打開への期待はある。文議長は文在寅(ムン・ジェイン)大統領に近く、政権の意向を受けて解決案を模索しているとの見方も多い。

文大統領の外交ブレーンである文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は26日付の東京新聞のインタビューで「合理的な案だ。国会で特別法をつくれば韓国政府は楽に動けるようになる」と言及した。南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使も27日の都内での講演で「政府が介入せずに原告と被告が円満に解決できる案だ」と述べた。

元徴用工問題を巡っては韓国政府が6月、日韓の企業が資金を提供して原告と和解する方法を初の解決策として日本政府に提示した。被告企業に責任を負わせるこの案は、1965年の日韓請求権協定に反するとして日本側がすぐに拒んだ。

ただ、文議長が今回まとめた案には「日本側から以前よりも肯定的な反応があった」(韓国政府関係者)とされる。基金が賠償を「代位弁済」し、日本企業の法的責任を明示しない形にすれば、個人の請求権問題は解決済みとする立場の日本側にも受け入れる余地が生まれるためだ。

とはいえ、韓国が反日世論が高まった国内の世論を押し切って今回の解決案を実行できるか懐疑的な見方は強い。文政権が支持基盤とする革新系団体では日本企業の責任をあいまいにした決着に反対するとみられる。

原告が受け入れない限り、最大の懸念である日本企業資産の現金化を防ぐことは難しいが、説得は容易ではなさそうだ。27日に韓国国会前で記者会見した原告の支援団体は「法案は誰に何の責任があるのかを分からなくしている。人権被害者たちの傷の回復に必要な省察すら含まれていない」と反対し、日本企業の賠償と謝罪が必要だと主張。その後、文議長に撤回を申し入れた。

日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効回避を踏まえた23日の日韓外相会談では、12月に1年3カ月ぶりの日韓首脳会談開催を調整することで一致した。2020年4月に総選挙を控え、文政権には日韓関係改善への期待があり、対立の根源である元徴用工問題の進展を得られるかが焦点になる。日本側は「韓国政府の責任で国際法違反の状態を是正する必要がある」(茂木敏充外相)として韓国側の調整を見極める構えだ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]