リオ・ティント、中核の鉄鉱石でも環境シフト

南西ア・オセアニア
アジアBiz
2019/11/27 22:00
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中国・宝武鋼鉄集団、清華大学との署名式

中国・宝武鋼鉄集団、清華大学との署名式

【シドニー=松本史】英豪資源大手、リオ・ティントが環境対応を加速している。中核の鉄鉱石事業は採掘時の温暖化ガスを減らすのに加え、メーカーである中国・宝武鋼鉄集団と連携して製鉄時の排出量を減らす技術を開発する。米鉱山ではリチウムの抽出に成功し、電気自動車(EV)向けに設備の建設を検討する。一方、石炭事業からは撤退した。株式市場では同社の取り組みを評価する動きもあるが、今後は利益成長の道筋を示す必要がある。

リオは27日、オーストラリアの鉄鉱石鉱山の拡張に約7億5千万ドル(約800億円)を投じると発表した。投資には採掘場から処理場近くまで13キロメートルに及ぶ運搬コンベヤーも含む。トラックに比べ、温暖化ガス排出量を3.5%削減できるという。同社は「再生可能エネルギーの活用も含め、さらなる削減策を検討する」としている。

鉄鉱石は売上高の約半分を占める最大の柱だ。環境対応を強化するため、採掘後の生産過程にも踏み込む。

9月下旬、中国鉄鋼最大手の宝武鋼鉄集団や、清華大学と鉄鋼業界の二酸化炭素(CO2)排出を減らす技術の開発で協力すると発表した。高炉生産が主流の鉄鋼業が出すCO2は世界の全産業の3割を占めるとされ、環境負荷が大きいためだ。連結売上高に占める中国向け比率は10年前の30%程度から足元で約50%に高まっている。環境対策が求められるのは中国側も同様で、リオと利害が一致する。

リオのジャンセバスチャン・ジャック最高経営責任者(CEO)は「顧客と協力して、生産、加工、販売に関して最も持続可能な方法を見いだす」と話す。新手法を開発すれば、鉄鉱石の顧客拡大だけでなく技術の外販につながる可能性もある。

アルミニウムでもメーカーと提携する。18年に米アルコアと合弁会社「エリシス」を立ち上げ、温暖化ガスを排出しないアルミ製錬の技術開発を始めた。米アップルも同事業に投資し、開発を支援している。

リチウム抽出に成功

新事業として期待するのが、EVの電池向けに需要拡大が見込まれるリチウムだ。10月には、ガラスなどに使われるホウ素を産出する米カリフォルニア州のボロン鉱山で、リチウムの抽出に成功したと明らかにした。

ホウ素を取り出した後の廃石を化学的に処理し、高温で熱した後に液体でろ過する。リオのエネルギー・鉱物部門トップ、ボールド・バータール氏は「すでに採掘された鉱物を活用しており、(採掘のための)エネルギーを多く使わずリチウムを生産できる」と話す。

リオは今後数カ月で1千万ドルを投じて試験設備を建設、最大で年間5千トン(炭酸リチウム換算)の生産能力を持つ設備の設置も検討する。「(高品質の)リチウムに関し米国で最大の生産者になる可能性がある」(バータール氏)。米テスラの「モデルS」の電池1万5000台分相当で、重要資源の国内開発を重視するトランプ政権の意向にも沿う。

リチウムが発見された米カリフォルニア州のホウ素鉱山(リオ・ティント提供)

リチウムが発見された米カリフォルニア州のホウ素鉱山(リオ・ティント提供)

リオはセルビアでもリチウムの採掘プロジェクトを手がける。これまで2億ドルを投資しており、21年までに最終的な投資判断をする計画だ。

オーストラリア・ニュージーランド銀行で資源投資を担当するソニ・クマーリ氏は「リオは戦略的に低炭素社会に役立つ資源に注力しようとしている」とみる。

石炭事業は撤退

「脱・炭素」に向け、18年には石炭事業から撤退した。かつては売上高の約1割を占めた石炭事業がなくなっても、業績は堅調だ。鉄鉱石などがけん引し、19年1~6月期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は103億ドルと前年同期から11%増えた。利益率はこの10年で最高だ。

資源企業の経営に詳しい秋田大学の川村洋平教授(鉱山工学)は「現在のように経営体力があるうちに、他社に先駆けて長期的な先行投資を行うのがリオの特徴だ」と分析する。

一方、競合の資源メジャー、豪英BHPグループは石炭事業が依然、売上高の約2割を占める。発電所の燃料に使う一般炭事業は売却も模索する。時期や価格を慎重に見極めているとみられるが、出遅れ感は否めない。

ESGの観点で資源企業に厳しい目を向ける投資家もリオの変化を評価する。世界最大の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金は08年にリオ株を投資先から除外したが、19年に投資を再開した。周辺地域に悪影響を及ぼすとされたインドネシアの銅山を、リオが売却したためだ。

リオのジャックCEOは「『大きいことは美しい』(という路線)が将来の成功を可能にするとはいえない」と指摘。大規模な権益獲得だけでなく、環境対応や中規模な投資を重ねて業績を改善させる考えだ。

ただ株価の上値は重い。QUICK・ファクトセットによると英リーガル・アンド・ゼネラルなど大手機関投資家の一部はリオ株の保有を減らしたままだ。リオの環境対応は、市場が納得できる具体的な収益シナリオを示す段階を迎えている。

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