繊細な泡に白馬躍動 京都のバリスタ、ラテアート
匠と巧

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関西
2019/12/2 7:01
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衛藤さんが細い工具を筆のように動かすと、ミルクが躍動する馬になった=目良友樹撮影

衛藤さんが細い工具を筆のように動かすと、ミルクが躍動する馬になった=目良友樹撮影

古都、京都。居並ぶ神社仏閣は永遠の祈りとともに長い時を刻んできた。そこに数分で消える泡を使うラテアートに情熱を注ぐ人がいる。国内大会で最年少優勝を果たした衛藤匠吾さん(25)だ。本格的に取り組み始めてから3年で全国トップに駆け上がった。

小川珈琲の本店(京都市)で衛藤さんが実演してくれた。エスプレッソが入ったマグカップに繊細に泡立てたミルクを静かに注ぐ。表面に模様が浮かび上がるが、ここで「何の形だろう」と思うのは門外漢。細い針状の工具で線や点をつけると、耳やしっぽを持つ馬が完成した。所要時間は約1分。おしゃべりしながらも、慌てるそぶりはない。

花柄や動物など様々な模様で飲む人を楽しませるラテアート。「見た目」を気にしがちだが、提供するのは1杯の飲み物。衛藤さんは「おいしそうなラテアート」を心がける。決め手は表面の艶と模様の滑らかさ。艶を出すためにエスプレッソとミルクを手早く混ぜ合わせる。エスプレッソも丁寧に抽出しないと模様のキメが粗くなる。

大会では作品の出来に加え、客とのアイコンタクトなどサービスも問われる。一連の技が評価され、衛藤さんはラテアートの全国大会「ジャパン・ラテアート・チャンピオンシップ(JLAC)」で2017年に当時23歳で優勝した。小川珈琲によると、優勝まで5年かかる人もいる。

高校卒業後に大学進学よりも手に職をつけたいという思いが強まった。パソコンで職業を調べると目にとまったのが「バリスタ」。コーヒーや絵が好きなこともあり、大阪市の専門学校に入学した。

専門学校とはいえ「授業だけで極めるのは難しかった」。放課後など空いた時間は同級生との練習に費やし、休日も登校しては基本となるエスプレッソ抽出を繰り返した。入社した小川珈琲でも持ち前の努力の虫が顔を出す。週5日、午前11時から午後10時までの業務をこなしながら、勤務前後や休日に練習を重ねた。時に1日の練習でコーヒー豆を4キログラム、牛乳を20本程度使うことも。

「楽しいけど苦しかった」と衛藤さん。その努力は入社2年目にJLAC4位という結果につながった。だが「トップ3に入れなかったのが悔しい」と研さんを重ねて17年にはトップの座をつかみ、世界大会の出場権も得た。

エスプレッソにミルクを注ぎラテアートを作る衛藤匠吾さん

エスプレッソにミルクを注ぎラテアートを作る衛藤匠吾さん

ラテアートは一説には1990年代後半にシアトル系カフェの広がりとともに国内で普及したとされる。「インスタ映え」が意識される昨今は集客にも役立つ。客が予想しない絵柄が出ると、写真を撮ってSNS(交流サイト)でシェア。小川珈琲の名前が広がり、来客数が増える。同社のコーヒー教室でもラテアートの回は人気という。

衛藤さんの目標は世界一。17年に日本代表として出た世界大会では約40の国・地域のうち15位で「満足していない」。世界のライバルと競い合うほどに面白い絵柄が生まれそうだ。

(横山龍太郎)

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