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五輪とA代表 森保監督、必然の「二足のわらじ」
サッカージャーナリスト 大住良之

2019/11/28 3:00
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「私のころとは状況が違う。五輪代表監督とA代表監督の兼任は無理だ」

2018年秋、そう語ったのは、フィリップ・トルシエ氏。1998年から2002年まで日本代表監督を務め、2000年のシドニー・オリンピック監督、さらには99年のU-20ワールドカップ(W杯、当時の名称はワールドユース選手権)の監督も兼任し、02年W杯日本代表を若手中心のチームにして成功を収めた。

1-4と日本が惨敗したベネズエラ戦の前半、選手に発破をかける森保監督=共同

1-4と日本が惨敗したベネズエラ戦の前半、選手に発破をかける森保監督=共同

五輪代表も3分の1は「欧州組」

トルシエ氏の時代には、A代表と五輪代表の活動は重なっていなかった。代表選手の大半はJリーグのクラブ所属で、五輪代表の活動への協力も得やすかった。しかし現在では、A代表の大半とともに、五輪代表の3分の1以上が「欧州組」で、活動も原則として同時期に行うことしかできなくなっている。トルシエ氏は、「体を2つに引き裂くことはできない」と危惧したのだ。

11月に国内で行われたU-22日本代表(五輪代表)とA代表の親善試合がともに敗戦、しかも「惨敗」と言っていい内容で終わり、森保一監督の兼任を危惧する声が高くなっている。

22年W杯アジア2次予選、アウェーのキルギス戦(11月14日)から帰国して17日に広島で行われたコロンビアとのU-22代表戦で指揮をとった森保監督だったが、0-2の完敗。2日後、A代表はベネズエラと大阪で対戦、前半だけで4点を奪われ、1-4で敗れた。

コロンビア戦とベネズエラ戦の前半、ともに相手が非常に強いプレスをかけ、日本の組織を分断した。個々に余裕がなくなった日本は、ミスを連発し、昨年来、「2つの森保ジャパン」が見せてきた連動したサッカーがまったくできなかった。

キルギス戦で2点目を決め喜ぶ原口元気(中央)。日本は快勝した=共同

キルギス戦で2点目を決め喜ぶ原口元気(中央)。日本は快勝した=共同

五輪代表は10月に横内昭展コーチが監督代行としてブラジルに遠征、ブラジルU-22代表と対戦した。ブラジルは来年1月にコロンビアで行われる東京五輪予選に臨むチームで、大半が欧州のクラブで活躍している選手だった。もちろん、16年リオデジャネイロ五輪に続く金メダルを目指したチームだ。このブラジルに、U-22日本代表が3-2で勝ったのだ。

日本の長所を消したコロンビアとベネズエラ

DF冨安健洋、MF堂安律、MF久保建英、MF板倉滉はA代表に招集されて不在だった日本だが、MF田中碧(2点)とMF中山雄太のゴールで逆転勝ち。ブラジルの2点はいずれもPKだった。

この日本に、U-22コロンビア代表はまるで「決勝戦」のような激しい闘志で向かってきた。堂安、久保、板倉を先発させ、「現時点でのこの年代のベスト」(森保監督)という選手を送り出しながら、まったくいいところなく敗れたのだ。

ベネズエラの激しいプレスに 前半の日本は余裕がなかった=共同

ベネズエラの激しいプレスに 前半の日本は余裕がなかった=共同

そしてその2日後、キルギスで2-0の勝利をつかんだチームから欧州組の9人をクラブに戻し、新たにJリーグから9人を選んで戦ったA代表のベネズエラ戦も、U-22のコロンビア戦とまったく同じような試合になった。相手の激しいプレスに選手間の距離を保てず、ミスを連発したのだ。この試合の後半はやや持ち直したものの、4点をリードしたベネズエラがペースを落とさなければU-22と同じような試合になったかもしれない。

原因は明らかだ。コロンビアもベネズエラも日本の長所をしっかり分析し、激しいプレスでチーム組織を分断にかかったのだ。その圧力に日本選手がわずかにたじろいだところを、コロンビアもベネズエラもすばやいパスワークでついた。組織での守備ができず、「個の勝負」を強いられたとき、日本選手はもろさを見せた。

だが私は、この時点でこうした試合をしたことは、今後のU-22と日本代表にとってこのうえない大きな経験と教訓になったと考えている。

1人が1歩踏み込むのをためらうことで守備は後手後手になってしまう。1人が1歩攻撃への切りかえが遅れることで前線のコンビネーションが成り立たなくなる。言い換えれば、その1歩を踏み出すことができさえすれば、日本の組織プレーができるということなのだ。コロンビア戦とベネズエラ戦は、それを選手たちに思い知らせたはずだ。

森保監督が五輪監督に就任してしばらく後の17年11月、私はベルギーのブルージュの町中でばったり会ったことがある。ハリルホジッチ監督率いる日本代表がベルギー代表と対戦する前日のことだ。数分間の立ち話だったが、彼はこんな話をした。

コロンビア戦の後半、交代する堂安(左)を迎える森保監督=共同

コロンビア戦の後半、交代する堂安(左)を迎える森保監督=共同

1人でも多くの選手がA代表へ

「もちろん、東京五輪でメダルを目指しますが、最も大事なのは、五輪代表を超えて1人でも多くの選手がフル代表に昇格し、22年の、そして26年のW杯で日本を上位に導くような活躍をしてほしいということです」

今日の日程のなか、五輪代表と日本代表の監督兼任はたしかに楽ではない。しかし森保監督にとって「兼任」はごく当然のことなのではないかと思う。その仕事のすべてが、「W杯での上位進出」という現在の日本代表の最大の目標に向かっているからだ。個々の試合で勝利にこだわりながら多くの選手にチャンスを与え、チームから競争を絶やさないようにしている森保監督の下の日本代表強化は、けっして間違っていない。

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