Apple、睡眠追跡特許で示したスマート住宅構想

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2019/11/29 2:00
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米アップルは利用者の睡眠状態を追跡することで何を目指しているのか

米アップルは利用者の睡眠状態を追跡することで何を目指しているのか

CBINSIGHTS
 米アップルが睡眠状態を追跡する技術に注目している。2017年にフィンランドの睡眠記録端末メーカーを買収したほか、睡眠状態をより正確に確認する特許をこのほど取得した。アップルはこの技術で最終的に何を狙っているのか、CBインサイツが特許情報から探った。

米アップルは最近、複数の機器をデータ収集源として使い、人がいつ寝ているのかをより正確に判断する技術で特許を取得した。これは同社のヘルスケア分野での最新の動きだ。

アップルは以前からヘルスケア・健康分野に取り組み、睡眠データなど個人の健康記録の構築に力を入れてきた。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

同社が睡眠状態の追跡(トラッキング)に乗り出す最初の兆しは、17年にフィンランドの睡眠記録端末メーカー、ベディット(Beddit)を買収したことだ。さらに19年10月上旬には「アップルウオッチ」に睡眠アプリを搭載する可能性があることをうっかり漏らしてしまい(結局はまだ搭載されていない)、健康管理に今も関心を抱いていることがわかった。食事や運動、睡眠の改善など健康的なライフスタイルを目指す消費者が増えていることが背景にある。

この分野に力を入れているのはアップルだけではない。同社は最近「ユーザー活動の副次的な証拠に基づく睡眠の確認」(申請は15年)と題した特許を取得したが、テクノロジー大手各社もヘルスケア事業を急拡大している。

この記事では、アップルの新しい特許の仕組みや、これが同社の健康管理事業をどう深化させるのかについて調べる。

■アップルが取得した特許の仕組み

既存の睡眠トラッカー(追跡アプリ・装置)の大半は、スマートフォン(スマホ)など単一のデータ収集源に基づいて利用者が寝ていると判断する。だが、1台の機器から得るデータの精度は、複数から得る場合よりも下がる。

スマートホームには(睡眠状態を把握する)副次的なデータ収集源が豊富にある。スマート体重計やスマート冷蔵庫、スマート歯ブラシなどは全て主力デバイス(睡眠トラッカー)と同じネットワークに接続されているからだ。ユーザーがこうした機器を使用している間、スマート機器は主力デバイスにユーザーが起きている信号を送る。下の図ではこうした副次的なデータ収集源になり得る機器について示している。

ウエアラブル端末が特に「使われて」いなくても、スマート機器にユーザーのデータを送ることができる。

例えば、スマートウオッチを着けた人がキッチンに入ると、ウオッチはスマート冷蔵庫にID情報を送り、スマート冷蔵庫はその人がキッチンにいることを主力デバイスに伝える。スマート冷蔵庫を実際に使わなくても、近くにいるだけでその人物は起きていることを示す。これについて特許では、ユーザーが「キッチンのスマート冷蔵庫の近くで寝ている可能性は低い」ためだと説明している。

特許では主力デバイスに搭載されたセンサーを使って歩行や呼吸、会話、いびきなどその人特有の音のデータを収集し、誰がどんな活動をしているかを認識する点についても言及している。

さらに、「歯を磨く、蛇口をひねる、シャワーを浴びる、トイレを流す」など人間が意識的に出す音と、それ以外の音を識別する点についても触れている。「こうした活動により、人間が出したとみなされる特有の音が出る(例えば、犬にトイレを流すよう訓練することはできるが、これは通常は犬にはない行動だ)」と説明している。

■重要である理由

健康や睡眠の習慣に気をつける消費者が増えているのに伴い、「スリープテック」市場でシェアを獲得しようとするスタートアップ企業も増えている。

アップルの特許は睡眠追跡性能の向上を目指すだけでなく、利用者が何をしているのかを「把握する」スマートホームというさらに壮大な構想も示している(アップルはイヤホン「エアポッズ」でさえも生体データの収集に活用できるかどうかを調べている)。こうした構想の重要性はアップルの利益の伸びにより実証されている。同社のウエアラブル・アクセサリー部門の売上高は240億ドルと、今やパソコン「マック」部門とほぼ並んでいる。

ライバルもこの分野の重要性に気付きつつある。米グーグルは最近、スマートウオッチを手がける米フィットビットを21億ドルで買収すると発表した。

もっとも、自分の健康状態をモニターするために自宅にスマート機器を採用する消費者が増えると、プライバシーが大きな問題になる。

今回特許を取得した技術では、属性から健康や運動に関するデータに至るまで、個人を識別できる情報を大量に収集することになる。特許ではデータを匿名化することを提案しているが、ネットにつながる機器を使ってより繊細な利用者データをもっと大量に収集しようとしている企業にとって、プライバシーはやはり重要な懸案事項になるだろう。

つまり、この特許はアップルが個人をモニターし、健康に関する分析を提供する総合的な製品の開発に取り組んでいることを改めて示している。

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