三菱商事・中部電、5000億で蘭電力買収 欧州市場に一石

2019/11/25 22:30
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三菱商事中部電力は25日、オランダの電力会社エネコの買収に向けて優先交渉権を獲得したと発表した。買収額は約5000億円。日本企業が海外の電力事業で、個人向けや法人向けの小売りから発電まで手広く事業を手がける初の事例となる。欧州の電力市場は他の地域に先駆けて再生可能エネルギーの普及が進んでいる。現地の事業展開を通じて電力自由化に対応した新たなビジネスのノウハウを吸収する。

三菱商事と中部電力は、オランダのエネコ社を共同買収し、再エネやデジタル技術を使った電力小売りなどの競争力を高める。

三菱商事が80%、中部電力が20%を出資する共同出資会社を設立。エネコの民営化に伴い、オランダの44の自治体から2020年6月までに全株式を買い取る。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなども買収の意向を示していたが三菱商事・中部電連合が競り勝った。買収資金は手元資金で賄う。

エネコは電力・ガスの小売事業ではオランダやベルギー、ドイツで600万件の契約を持つ。契約件数のシェアはオランダで2位、ベルギーでは3位だ。欧州市場の自由化に伴い電力・ガスの売買取引(トレーディング)も展開する。18年度の最終利益は1億3600万ユーロ(約163億円)。

再エネでは07年に参入した先行組で、陸上風力を中心に持ち分容量が120万キロワットに達する。5年以内に約2倍の260万キロワットまで高める。買収が完了すれば三菱商事の再エネの持ち分容量は約2.5倍の300万キロワットになる。発電量ベースでみると同社の再エネ比率は10%だったのが20年代前半には約20%になる。

デジタル技術への対応もエネコの強みだ。ドイツの世界最大の仮想発電所(VPP)会社「ネクストクラフトベルケ」にも3割超を出資し、デジタルを活用した電力の需給調整で先手を打つ。需給調整用の発電設備も保有している。

三菱商事と中部電が大型の買収に踏み切る背景には、電力市場の構造変化を成長につなげる狙いがある。欧州では電力市場の自由化が進み、オランダでは卸売市場を介した電力取引が一般的。電力のトレーディングが日本よりも活発だ。欧州の顧客基盤を手に入れ、分散型電源や蓄電池、VPPなどの新たなビジネスを強化する。

三菱商事はこれまでIPP(独立系発電事業者)やエネルギーの「上流」にあたる天然ガス権益では強みを持っていた。今回の大型買収で消費者に近い家庭向けのビジネスも強化できる。

一方、中部電は海外事業を強化するために大型買収に参加した。国内電力需要は省エネの普及と少子高齢化で低迷。先細りが避けられないという危機感が背中を押した。20年代後半までに、利益の半分を海外と再エネなど新領域で稼ぐ方針だ。

ただ再エネ市場は足元で潮目の変化を迎えている。固定価格で電気を買い取る各国の制度は見直される場合も多い。発電事業者やメーカーはコスト競争力の強化を求めて再編に動いている。

仏電力エンジーとポルトガル電力公社は5月、洋上風力発電の事業統合を決めた。メーカー側も独シーメンスの風力発電機子会社のシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー(SGRE)が10月、経営破綻した同業の独センビオンの陸上風力発電機事業などを買収すると発表した。

欧州では優良な風力発電所の建設地が少なくなってきたとされる。三菱商事と中部電は欧州での電力事業拡大でノウハウを吸収する考えだが、日本や米国、アジアなどで事業を広げられなければ、激化する競争の渦にのみ込まれかねない。(花房良祐、星正道)

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