ネタニヤフ首相、苦境深く 打開へ2度目再選挙3月か
イスラエル検察、汚職で起訴

中東・アフリカ
2019/11/22 18:00
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【カイロ=飛田雅則】中東での米国最大の同盟国イスラエルで、現職首相が汚職で起訴される同国で初めての事態が起きた。ネタニヤフ首相は辞職を拒んでおり、2度目のやり直し総選挙が2020年3月ごろに実施される可能性が一段と高まった。その場合、ネタニヤフ氏は与党の右派リクードの勝利に全力をあげる。支持固めを狙いイラン、パレスチナへの強硬姿勢に拍車をかけるとの観測もある。地域の混乱がさらに深まりそうだ。

21日、エルサレムで、イスラエル検察の起訴に抗議し、ネタニヤフ首相の自宅周辺に集まった支持者ら=ロイター

イスラエル検察当局のマンデルブリット検事総長は21日の記者会見でネタニヤフ氏を収賄、詐欺、背任の3つの罪で起訴したと明らかにした。ネタニヤフ氏が通信大手ベゼクに便宜を提供する代わりに、同社傘下のニュースサイトが同氏に好意的な報道をするよう求めたことなどが起訴事実だ。

ネタニヤフ氏は起訴を受けた演説で身の潔白を主張し「首相は辞めない」と強調した。21日にはエルサレムの同氏の自宅近くに支持者が集まり「マンデルブリット、あしたはおまえが容疑者だ」などと書かれたプラカードを掲げ抗議した。

イスラエルの法律で、首相は起訴されても有罪が確定するまで職にとどまれる。公判を経て収賄罪が確定すれば、最長10年の懲役が科せられる可能性がある。ネタニヤフ氏は首相として政権トップに君臨する一方、議会対策を進め、免責を得られるような法案の通過を目指すとの見方もある。

イスラエルでは9月のやり直し総選挙で一院制の国会(定数120)の第1党(33議席)を得た中道野党連合「青と白」の指導者ガンツ元軍参謀総長が20日、リブリン大統領に指示された組閣に「失敗した」と表明したばかり。国会が3週間以内に、議員の過半数が支持する首相候補を擁立できなければ再び国会を解散し、90日以内に総選挙をやり直す。「総選挙は20年3月ごろ」と報じる現地メディアもある。

そうなれば4月、9月に続き1年間で3度目の総選挙になる。1948年の建国からの政権がすべて連立というイスラエルでも初のケースだ。

9月のやり直し総選挙でネタニヤフ氏が党首のリクードは32議席で第2党に後退した。同党と「青と白」が大連立という形で組めば国会の過半数(61議席)を確保できるため、双方は協議を重ねたが決裂した。ガンツ氏は大連立の条件として汚職疑惑を抱えるネタニヤフ氏の首相退陣を突きつけ、同氏がこれを拒否したためだ。ネタニヤフ氏が起訴されたことでガンツ氏がこの条件を取り下げる選択肢は消えた。

トランプ米大統領はネタニヤフ氏の首相続投を支持する姿勢を鮮明にする。イスラエルの安全保障を脅かすイラン、パレスチナに強い姿勢をとる右派政権は、20年の米大統領選で再選を目指すトランプ氏の支持基盤であるキリスト教保守派に考え方が近いためだ。

18日にはポンペオ米国務長官がヨルダン川西岸のパレスチナ自治区へのイスラエルの入植活動を「国際法に違反しない」と明言し、ネタニヤフ氏が目指す西岸の一部の併合を後押しした。米国の歴代政権の態度を覆す指摘だ。

ネタニヤフ氏は国内右派勢力に支持を広げるため、イラン、パレスチナを攻撃する姿勢を強めるとみられる。イスラエル軍は12日、パレスチナ自治区ガザの過激派「イスラム聖戦」の司令官を空爆で殺害した。20日にはシリア領内の同国軍とイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の軍事拠点数十カ所に空爆を実行した。いずれも多数の死傷者を出したが、あえて周辺との緊張を高めたいネタニヤフ氏の意図が背景にあるとみられている。

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