米ネット大手、「政治広告」見直し グーグルも追随

ネット・IT
北米
2019/11/22 11:42
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【シリコンバレー=奥平和行】 米国のインターネット企業の間で政治広告の取り扱いを見直す動きが加速してきた。ツイッターが掲載の全面中止を決めたのに続き、グーグルも制限すると決めた。特定の層を狙った政治広告が、投票判断をゆがめるとの懸念が高まっているためだ。フェイスブックは掲載を続ける方針で、同社の動向が今後の焦点となる。

米グーグルは政治広告の「ターゲティング」を制限するが、これで批判がやむかは不透明だ(米カリフォルニア州マウンテンビュー市のグーグル本社)

「最近の懸念や議論を考慮し、有権者の政治広告に対する信頼を高める必要があると考えた」。グーグルで広告の製品管理を担当するバイスプレジデント、スコット・スペンサー氏は20日、検索エンジンやユーチューブなどで政治広告の運用を見直す理由を説明した。

グーグルはこれまで米国で、広告主が「右寄り」「左寄り」「中立」という政治的な立場などを基準に配信対象者を絞り込める機能を提供してきた。今後はこの機能を停止させる。配信絞り込みの基準は年齢と性別、郵便番号に基づく大まかな居住地のみとする。

同時に、今後配信を禁じる内容として「ディープフェイク」を挙げた。画像や音声を人工知能(AI)などを使って加工し、本物に見せかけた偽の動画を指す。ほかにも、州レベルの選挙でも政治広告の資金の出し手を公開するなど、透明性を高める。

まず12月12日に総選挙を控える英国で、来週半ばまでに新たなルールを導入する。対象地域を段階的に広げ、2020年1月6日までに世界各地で始める予定だ。

米国でネット企業の政治広告への注目が高まる背景には、利用者の閲覧履歴を分析して、趣味や思想などを高度に推定できるようになった事情がある。ネット分析の技術を使えば、一部の有権者に重点的に広告を配信できる。選挙での投票の判断をゆがめるとの批判が強まっている。

16年の米大統領選を機にこうした問題に焦点が当たった。米議会ではネットを活用した政治広告を規制する動きも出たが、ネット企業は「自主規制」を主張。だが、ツイッターは現在の技術では政治広告の問題を解決するのは難しいと判断し、「全面禁止」を打ち出した経緯がある。同社は15日に新たな広告の指針を公表し、22日から適用する。

一方、フェイスブックは「知る権利」などを理由に政治広告を続ける意向を示している。米ピュー・リサーチ・センターの今年2月の調査によると、米国におけるフェイスブックの利用率は69%に達し、ほかのSNS(交流サイト)を大きく上回る。同社は個人情報の不適切な管理で批判を浴びた経緯もあり、20年の大統領選に向けて動向が焦点になっている。

マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は政治広告の重要性を繰り返し主張し「私企業に政治家の発言を検閲する権利はない」と内容の規制にも消極的だ。こうした姿勢に対して一部社員が異議を唱えている。米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)も21日、過度の絞り込みの制限を検討していると報じた。

ただ、自主規制を進めたとしてもネット企業への風当たりが和らぐかは不透明だ。

トランプ米大統領の陣営がネット広告を多用していることを背景に、野党・民主党を中心に政治広告そのものへの批判を強めている。全面的に禁止しない限り、抜け道が残るのが一因だ。一方、全面禁止を打ち出しても広告の役割を認める勢力から反発を受ける恐れがあり、各社は難しい判断を迫られている。

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