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退職金、受け取り方の極意 まず決めることは?

経済コラムニスト 大江英樹

写真はイメージ=123RF

会社員であれば企業によっては退職給付制度があり、形式は様々ですが何らかの形で退職一時金や企業年金などのあるところがあります。老後の生活を支えるための一番の土台は何と言っても公的年金で、これに上乗せされるのがこうした企業の退職給付制度です。

一概には言えませんが、退職給付制度では多くの企業で退職金を一時金でまとめて受け取るか、それとも年金方式で長期間に分割して受け取るかを選べるようになっています。一時金と年金方式を併用し、受け取る割合を自分で選べるという企業もあります。

定年間近となった会社員の間でよく話題になるのが、退職金を一時金で受け取るか、それとも年金方式で受け取るかどちらがいいかということです。私も現役時代に企業の退職給付制度にかかわる仕事をしていたので、会社の知人から「どっちが得なんだ?」という質問をよく受けたものです。でもこれはケース・バイ・ケースで、どちらが得と一刀両断には言えないのです。

「一時金の方が得」という思い込みは禁物

例えば世間では「税金だけの面でみると、一時金で受け取る方が有利」といった見方をよく聞きます。所得税を計算するときに適用する退職所得控除という非課税枠が大きいというのが理由です。退職金がまるまる非課税になると思い込んでいる人もいるようです。しかし退職所得控除の額はそれぞれの勤続年数によって違い、勤続20年なら800万円、30年では1500万円といった具合です。一時金と年金方式を併用している企業であれば、公的年金を受け取れない時期に一定額以下を年金方式で受け取った方が条件次第で税金が少なくなることもあります。

さらに年金方式では年金を受け取り終えるまで企業が一定の利率で運用をしてくれることになっています。この利率は「給付利率」といい、現在は2%台前半のところが多いようです。一時金で受け取った場合、何もせずに放っておくと金利は付きません。資産を増やしたいなら自分でリスクを取って運用せざるを得ないので、一定の利回りを約束している年金方式の方が一時金よりもいいという考え方もできます。

このように一時金か年金方式のどちらが有利かは千差万別なので、一人ひとりのケースによって考えるしかないのです。ただし受け取り方を選ぶ際におさえておきたいポイントがあります。それは(1)自分の定年後にまとまった金額の資金ニーズがあるか(2)60歳以降も働くかどうか――の2つです。

まず(1)について説明しましょう。定年退職した時点で住宅ローンが残っていたり、子や孫の教育費を負担したり、もっと年をとったときに高齢者施設に入居するための資金に充てたりする場合は一時金で受け取るのが有力な選択肢になります。借入金を返済する、教育費を確保することなどによって、定年後のお金のやり繰りにメドがつくだけでなく心理的な不安感を解消することも期待できます。特に決まったニーズがなくても、病気など万が一の支出に備えておきたいなら一時金で受け取ってもいいでしょう。

ライフプランを最優先で決めよう

(2)の定年後も働くかどうかも重要です。働き方や収入の多寡によって支払う税金や社会保険料は違ってくるからです。どれぐらいが生活の足しになるのかを考えた場合、おのずと受け取り方のバリエーションはより幅広く複雑になるでしょう。

この2点のほかには独身か家族がいるか、家族がいるなら年齢構成はどうかもポイントになりそうです。また一時金で多額のお金を受け取ればつい無駄遣いする可能性はありますし、年金方式で受け取る場合は企業の経営状況の悪化で影響が出てくるリスクもあるなど、考えるべき点はたくさんあります。

多くの企業では恐らく定年を迎える1~2年前には退職給付制度や退職後の社会保険の説明会を実施しているでしょう。公的年金の金額は「ねんきん定期便」で把握することが可能ですが、会社の退職給付制度は会社から説明をしてもらわないと分かりません。それらをしっかりと確認するとともに、「自分はどんなライフプランを持っているのか」を最優先して決めるべきかと思います。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は12月12日付の予定です。
大江英樹
野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年3.0 50代から考えたい『その後の50年』のスマートな生き方・稼ぎ方」(日経BP)、「定年男子 定年女子 45歳から始める『金持ち老後』入門!」(同、共著)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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