日本センチュリー響発足30周年 苦境の中で音楽に深み
文化の風

2019/11/22 7:01
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日本センチュリー交響楽団首席指揮者の飯森範親 

日本センチュリー交響楽団首席指揮者の飯森範親 

日本センチュリー交響楽団が12月、発足から30周年の節目を迎える。充実した演奏を続ける一方で、経営面では2011年に大阪府から独立して以降、苦境が続く。14年から首席指揮者として楽団を率いる飯森範親に、演奏・経営両面での成果と展望を聞いた。

もともとセンチュリー響はアンサンブルの精度には定評があった。だが飯森は首席指揮者就任にあたり「音楽も練習も、良くも悪くも真面目」との印象を抱いていた。「少し羽目を外すぐらいの思い切りの良さが加わればもっと魅力的になる」と感じたという。

■独奏機会増やす

そこで15年から、「ハイドンマラソン」をスタートさせた。交響曲の父と呼ばれるハイドンの104ある交響曲を、8年かけて演奏する異例の大型企画だ。個性を磨くため、楽員が協奏曲のソリストとして舞台に立つ機会も多く設けた。

ハイドンは古典派音楽の基礎を作った作曲家。勇壮華麗なロマン派と比べると、音楽はシンプルだ。飯森は「シンプルだからこそ、音楽のどこにポイントを置くか、どう魅力的に聴かせるかを共有すれば、音色や音程感覚がさらにステップアップし、楽員の自主性も育まれる」と強調する。

飯森は現在、芸術総監督を務める山形交響楽団でも07年から8年かけてモーツァルトの交響曲全47曲を演奏。高い評価を受け、山響の知名度を上げた。その経験から「センチュリー響もレベルアップする確信があった」と振り返る。

ハイドンマラソンは来年1月の公演で52曲に到達し、折り返しを迎える。成果は表れているようだ。通常、定期演奏会に向け3日間のリハーサル日を設けるが、ハイドンに取り組み始めてから「初日からほぼ完成された演奏ができるようになった」という。そこから本番に向けて音楽を磨くため「お客様に聴かせる音楽は1歩も2歩も深くなっている」と自信をみせる。

20年度のシーズンから、ミュージックアドバイザーに秋山和慶が就く。プロの楽団を指揮して50年以上の大ベテランで、桐朋学園大では飯森の師匠でもあった。飯森は秋山について「楽譜を瞬時に理解する能力がある」とたたえる。

秋山は就任直後の4月を皮切りに、年10回ある定期のうち3回でタクトを振る。飯森は「楽団にまだ足りない部分をベテランの目で見てもらい、強いところはさらに伸ばしてもらえれば」と期待を寄せる。

■資金集めに苦戦

一方、経営面では苦境が続く。「音楽家はサービス業」という信条を持つ飯森。山響では企業との共同企画など経営面でも力を発揮してきた。センチュリー響でも新たなスポンサー獲得に向け、かかる期待は大きい。飯森は「大企業は既に他の在阪楽団を支援しており、状況は厳しい」としつつ「1社に頼るのではなく、様々な企業に応援してもらう形を作りたい」と語る。

ここ2年ほどは自ら経営者を訪問し、支援を求めることに力を入れているという。19年度には経済人とのパイプを生かし、最大額を支援するスポンサーとして日本商業開発(大阪市)を獲得した。「1年から1年半ほどの間にさらなる支援企業を発表できるのではないか」と手応えを語る。

センチュリー響は、大阪府から引き継いだ基本財産20億円から毎年3億円程度を取り崩してきた。楽員の給与削減などによりここ数年は取り崩し額を減らし、19年度は予算ベースで約1億円まで圧縮した。経費削減は「乾いたぞうきんを絞るような」(望月正樹楽団長)状況だ。

今後、基本財産に余裕のある2~3年の間に支援先を増やし、経営を軌道に乗せることが求められる。残された時間は長くない。

(西原幹喜)

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