Apple、瀬戸際のトランプ氏懐柔 迫る追加関税

2019/11/21 11:00
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【シリコンバレー=白石武志】米アップルが対中制裁関税の拡大回避に躍起になっている。20日にはティム・クック最高経営責任者(CEO)が米テキサス州の工場でトランプ大統領を迎え、米国での雇用創出の実績などをアピールした。主力の「iPhone」などへの追加関税の発動は12月中旬に迫る。瀬戸際での撤回に向けて懐柔を図っている。

トランプ氏は20日午後にテキサス州オースティンにあるアップルの提携先の工場を訪れた。同社のデスクトップパソコンの最上位機種「Mac Pro」を生産する工場だ。アップルの主力製品で唯一、米国内で組み立てられているが、12月に発売する新モデルについては、対中制裁関税の影響で米国生産の継続が危ぶまれていた。

ステンレス製のフレームや電源装置など中国からの輸入部品は発動済みの対中制裁関税の対象になっており、アップルは米通商代表部(USTR)に適用除外を申請していた。トランプ氏は当初、受け入れに否定的な姿勢を示していたが、USTRが複数の中国製部品について制裁関税の適用除外を認めたことで、米国生産の継続が決まった経緯がある。

アップルは同日、18年12月に建設計画を発表したオースティンの新社屋が、同工場の近くで着工したことも発表した。22年の完成後は1万5000人を収容できるという。米国での雇用創出を公約に掲げるトランプ氏の視察に合わせて米国での投資拡大をアピールすることで"手土産"を持たせた格好だ。

トランプ氏は工場内で開いた記者会見で、「米国生産する限り、関税を心配する必要はない」と強調した。同席したクックCEOも「米国で生産することほど誇りに思うことはない」と応じ、Mac Proの中国製部品に対する追加関税の適用除外を決めた判断に謝意を示した。

トランプ米大統領を案内する米アップルのクックCEO(米テキサス州オースティン)=ロイター

トランプ米大統領を案内する米アップルのクックCEO(米テキサス州オースティン)=ロイター

ただ、アップルにとって最大の懸案はほぼ全ての中国製品に制裁関税を広げる「第4弾」の扱いだ。対象品目にはスマートフォンやノートパソコンが含まれ、これまで先送りされていたiPhoneやiPadなどアップルの主力商品についても12月15日には15%の追加関税が適用される予定となっている。

米中は農業や金融分野などに絞って貿易交渉で部分合意する方向で協議を進めているが、トランプ氏は決裂した場合には関税の引き上げに踏み切る構えを示している。仮に第4弾の品目への制裁関税が発動となった場合、増税分をアップルがただちに小売価格に転嫁するのは難しいとみられ、同社の利益水準を押し下げる要因となりうる。

クックCEOは19年8月にもワシントンでトランプ氏と夕食をともにするなど、制裁関税の拡大回避に向けて米政権との距離を縮めてきた。トランプ氏もクック氏について「問題があるときはいつも電話をかけてくる良いやつだ」と評価する。米政権と一定の距離を取るシリコンバレー企業の中では異例の蜜月ぶりが注目を集めるようになっている。

20日の記者会見では、トランプ氏からアップル製品への追加関税の適用除外について「検討している」というリップサービスまで飛び出した。「(韓国の)サムスン電子と同じようにアップルを扱う必要がある」とも発言するなど、制裁関税は中国生産比率が少ないライバルメーカーを有利にするだけだというアップルの主張を考慮する姿勢も示した。

ただ、仮にアップル製品だけを優遇する判断を示せば、ライバルメーカーからの反発は必至だ。一方で公平を期すために12月15日の制裁対象品目からスマホやパソコンを除外すれば、中国に対する交渉圧力が弱まることになる。制裁関税の拡大を食い止めたいアップルとトランプ政権との間で、ギリギリの駆け引きが続くことになりそうだ。

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