キリン、クラフトビールに勝算 アサヒは「名門」重視

サービス・食品
北米
2019/11/20 22:21
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キリンホールディングス(HD)が小規模生産のクラフトビールを伸ばす姿勢を強めている。20日、この分野で米3位のニュー・ベルジャン・ブルーイングを買収すると発表した。消費の多様化を背景にしたクラフトビール市場の拡大に成長への勝算を見込んでいるからだ。一方、アサヒグループホールディングス(GHD)は大型の老舗ブランドを活用する方針で、戦略の差が明確になってきた。

ニュー・ベルジャン・ブルーイングは全米に販売網がある(コロラド州の工場)

ニュー・ベルジャン・ブルーイングは全米に販売網がある(コロラド州の工場)

ニュー・ベルジャンは1991年の創業で「ファットタイヤ」「ブードゥー・レンジャー」など40種類以上の商品を持つ。販売網は米国の全50州にまたがり、日本やオーストラリアにも輸出している。2018年の売上高は2億ドル(約218億円)。キリンHDは2020年3月末までに海外子会社を通じて全株式を取得する方針だ。買収額は公表していない。

キリンHDは買収の狙いを「米国でのクラフトビール市場でのプラットフォームを構築する」と説明する。キリン傘下でオーストラリアとニュージーランドの事業を統括する「ライオン」が持つクラフトビールの米国輸出も視野に入る。麦芽やホップなど原材料の共同調達によるコスト削減、品質管理や生産の効率化などを進める。

キリンHDは一部の新興国市場を除き、欧州、米国、豪などクラフトビールが定着している地域に照準を絞り、M&A(合併・買収)を実施、検討してきた。とりわけ米国はクラフトビールの市場が急拡大している。

クラフトビールは小規模生産が特徴で、香りや味わいのほか商品パッケージなどでも多様な商品を作りやすい。SNS(交流サイト)などを通じて知名度を上げ「スモールマス」の需要を取り込んでいる。大企業が巨大設備で生産し、大規模な広告宣伝を通じて販売する従来型商品とは一線を画す。

米国では2000年代に増え始め、販売量は18年に全体の13%を占めた。日本で言えばキリンとアサヒの国内出荷の合計量である358万キロリットルにあと数年で追いつく規模まで育った。キリンHDは16年、ブルックリン・ブルワリー(ニューヨーク州)に24.5%出資した後も拡大の機会をうかがってきた。

キリンHDの磯崎功典社長は「米国では若者を中心にナショナルブランドの価値が認められなくなっている。多様な味を楽しめるようにする必要がある」と話す。クラフトビールに注力するのは、米国の現象がいずれ世界の潮流になるとみるからだ。

対するアサヒGHDは「主要4ブランドを高級ビールとして世界に展開する『プレミアム戦略』」(小路明善社長兼最高経営責任者=CEO)をとる。買収対象も世界首位のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)の欧州事業など、「名門」の大型ブランドが目立つ。クラフトビールの可能性は認めながらも、大型ブランドをまだ浸透していない地域で伸ばす方が成長への近道とみているからだ。

中国や韓国のほか、新興国でもホテルや高級料理店などでの取り扱いを増やす。富裕層を中心に高級ビールで定着することにより、一般消費者への普及が進むとみる。

キリンとアサヒで差が出た背景には、国内市場における立ち位置の違いがありそうだ。ビール市場でアサヒの「スーパードライ」ブランドは約4割と圧倒的なシェアを持つ。「日本のトップブランド」をうたい文句に、海外市場の開拓余地はまだ大きいと分析する。

キリンは「一番搾り」では水をあけられているが、第三のビールなどを含む「ビール系」全体のシェアではアサヒに肉薄する。クラフトビールを新たな武器に、海外でも商品の「総合力」で勝負する戦略だ。

海外ビール大手の戦略も分かれる。インベブはキリンHDと同様にクラフトビールの買収に乗り出す一方、オランダのハイネケンは高級ブランドの世界展開を進める。世界保健機関(WHO)がアルコール飲料への規制を検討するといった逆風もあるなか、最適解の模索が続く。

(後藤健)

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