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集客のカリスマ 美容モールって何?(日経MJ)

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NIKKEI MJ

ヘアカット、トリートメント、ネイルケアなど美にまつわる10のショップが集結した東京・表参道の美容モール「THE SALONS」が注目だ。テナントはそれぞれの分野で多くの固定客を持つカリスマたち。女性客だけでなく今、商業施設関係者も吸い寄せられる。12月に東京・銀座、その後は地方・郊外にも展開する予定だ。テナント集めに悩む全国の商業施設の救世主となるか。

次は銀座、地方にも

「これだけ近いと色々行きたくなっちゃうよね」。薬剤師の月永沙耶香さん(33)は月1回、美容室「i.(アイドット)」に通いつつ、近くのトリートメントサロン「リスタート アン」も利用する。

東京・表参道に5月開業した「THE SALONS(ザ・サロンズ)」。広さが約230平方メートルという美容モール、従来の商業施設とは構造も収益モデルも異なる。

特徴1 1フロアに集結 カット、トリートメント、エステ、ネイルなどのショップが1フロアに集まる。「女の子って丸1日美容に充てる人、結構いるんです」と月永さん。髪、肌、爪、全部1日で、と思っても、それぞれのサロンが離れていて不便だったとか。

特徴2 全員カリスマ サロンズの10ショップはすべて個人事業主。カットやネイルなど、それぞれの分野のカリスマたちだ。「うちに来るショップは皆、ちゃんと顧客がついているスタイリストばかり」(窪島剣璽取締役)。カットサロン「アイドット」のオーナー、山内大成さん(29)は約200人の固定客を抱える。

もともと美容チェーンで働いていた山内さん。「独立したかったけど、知識もなかったし貯金もなかった」。サロンズの存在を知り、4月末に退職し、5月に出店した。

特徴3 賃料は固定で月26万円から 山内さんのように腕に覚えがあるが、一歩が踏み出せない美容師は多い。サロンズの賃料は固定で、売り上げが伸びれば手取が増える仕組み。一般的な商業施設の賃料は固定部分と売り上げ比例分の組み合わせが多く、固定客の多いカリスマたちにとっては収益機会が増える。

特徴4 雑務はお任せ この賃料は光熱費、月300枚までのレンタルタオル代なども含まれる。カリスマたちは接客に専念できる。

特徴5 かぶらないショップ サロン内にはカットだけで5店ある。「ガーリー」「大人っぽい」「メンズ」などそれぞれのカラーが明確で、フロア内で客の取り合いは起こらない。

特徴6 完全プライベート空間 それぞれのサロンは個室で、1サロンで客は原則1人。「ほとんど他人に会わない」(月永さん)プライベート感も受けている。

特徴7 料金表の店外掲示は禁止 サロン内での客の争奪は不毛。店外に料金を表示させないことで値下げ競争を避ける。ショップ同士を競わせて集客する商業施設とは思想が違う。

サロンズを運営するThe Salons Japan(東京・世田谷)の清水秀仁社長は「うちは美容師ファースト」と語る。全10室は5月の開業当初から入居待ち状態が続き、現在は8ショップが待つ。サロン事業は現在、黒字という。

山内さんの収入は大手チェーン勤務時代から増えた。

12月上旬には東京・銀座に美容モール2号店を出す。松屋銀座店裏の商業ビルの1フロアで、元は美容関連ショップ。広さ約230平方メートルに10のショップが入る。

実は2号店出店を決めたのは表参道店がオープンしてから。「支出意欲の高い女性を中心に、安定した集客が期待できることもあって、すぐに物件は決まった」(不動産仲介業者)。個人で開く美容室の場合、小さすぎて適当な物件が少ないが、サロンズの広さなら見つけやすいという。

サロンズは今後、東京都心以外に広がる。

ある大手百貨店は都心から郊外にかけて出店場所を検討している。「来年中に1号店をオープンしたい」と意気込む。

担当者は「お客様が定期的に通う美容関連のテナントは積極的に入れたかったがなかなか難しい」と漏らす。この百貨店は数年前から美容関連のテナントを誘致してきたが、悩みの種は「入居したサロンのスタイリストが退職すると、客も消えること」だった。サロンズのように多くの固定客を抱えるスタイリストが直接、経営するショップなら、そうしたリスクを減らせる。この百貨店のほか、地方の大手ショッピングセンターも出店を検討している。

脱・テナント同質化

美容モール人気の背景には、最近の商業施設共通の悩みがある。それはテナントの同質化だ。ユニクロやニトリなど集客力の高いショップを導入しても、近隣の施設にも入り、違いを打ち出せなくなる。フードコートも同様で「本当に入れたいのは地域の個人経営店」(大手不動産会社)。

美容モールは、ショップではなく、カリスマスタイリストその人に客がつくため、同質化しづらい。商業施設の企画開発・運営に携わるプロッド(東京・目黒)の田中紘之社長は「美容分野は食と同様に生活に欠かせない。客は定期的に通うため、今後、各地のショッピングセンター(SC)に広がる可能性がある」と指摘する。

シネコン、フードコート、医療モールなど、SCのキラーテナントは変遷してきた。美容モールは次の有力候補になりそうだ。

美容師出身の社長「独立、支援したい」

「美容師の独立はとても難しい」

The Salons Japan(東京・世田谷)を昨年11月に創業した清水秀仁社長は、もともと雇われ美容師だった。自らの体験を踏まえ、「もっと簡単に独立できるよう、支援する仕組みをつくりたい」という。

東京商工リサーチによると、19年1~10月の美容院の倒産件数は92件と過去最高に迫る勢いという。独立する前に経営について学ぶ機会がほとんどなく、「不動産、内装費、広告費など、すべて言い値でやっちゃう」(清水社長)。店を失い借金だけが残るケースも多いという。

リスクを考えると二の足を踏んでしまいがち。サロンズは美容師に新たな選択肢を提供する狙いがある。

サロンズのビジネスは美容モールの運営だけではない。来年には美容師専用のスマホアプリもリリースする予定だ。新店舗の出店のほか、サロン経営に関するセミナー情報などを発信していくという。東京・銀座に開く2号店では、サロンズの雰囲気を体感できるスペースもつくる。

今後は大阪、福岡と地方にも美容モールを展開していくという。

全国には美容師だけで53万人(厚生労働省調べ)、美容院の数は25万店(同)とコンビニエンスストアの数を大きく上回る。美容の分野は裾野が広く、各地には腕もコミュニケーション能力も高い美のカリスマたちが多くいる。清水社長は最終的に、「サロン経営のコンサルタントとして美容師の独立を支援していきたい」と話している。

(田村峻久)

[日経MJ2019年11月15日掲載]...

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