世界的演出家ムヌーシュキン、シンポで果敢な発言

2019/11/26 2:00
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フランスの世界的演出家アリアーヌ・ムヌーシュキン氏が京都賞受賞のため来日し、11月13日、東京の早稲田大学でシンポジウムに参加した。80歳の今も女性闘士の面影が色濃く、社会の分裂を引き起こす「悪」を激しく批判する鋭い言葉が印象的だった。

ムヌーシュキン氏(左)と宮城聡氏。活発な討論が繰り広げられた

ムヌーシュキン氏(左)と宮城聡氏。活発な討論が繰り広げられた

ムヌーシュキン氏は1939年生まれ。64年に太陽劇団を結成し、70年からパリの弾薬庫跡を本拠にスペクタクル性の高い話題作を連発している。裏方と俳優との垣根をなくした、平等の精神に基づく集団創作で知られる。その創作には十分な時間が必要であり、経済優先、助成金削減の世界的風潮を「時間が取り上げられようとしている」と難じた。劇団の信頼と友情をこわす分裂こそが悪だと断じ、その矛先は昨今の政治家にも向けられた。

井深大記念ホールで演出家、宮城聡氏らを交えて開いたシンポジウムで明らかになったのは、古典への変わらぬ信頼だ。集団創作で行き詰まると、ギリシャ悲劇やシェークスピア劇に回帰してきたという。信服する歌舞伎や人形浄瑠璃についても「ただ見なさい、この神秘を理解しなさいと言うだけでいい」特別な演劇ととらえていた。新国立劇場で来日公演した「堤防の上の鼓手」は人形浄瑠璃の手法を取り入れた舞台だったが、目下は日本を題材にした新作も準備中という。

「ただ演劇であること」を重視する立場から、欧米で声高に唱えられるポリティカル・コレクトネス(政治的正当性)を激しく批判する。太陽劇団はカナダ史を描く作品で、先住民の物語は先住民が演じるべきだという抗議にさらされた。ムヌーシュキン氏がポリティカル・コレクトネスの是非を問われた際、引き合いに出したのは女形の坂東玉三郎だった。「女の役は女が演じないといけないとなれば、玉三郎さんの芸術はどうなってしまうのか」。決然とした発言だった。

(内田洋一)

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