さいたま市、食肉卸売市場を移転 欧米輸出の拠点へ

南関東・静岡
2019/11/19 19:46
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さいたま市は2028年をメドに食肉中央卸売市場を大宮区から見沼区へと移転・新設する。米国や欧州の基準に合わせ管理体制を強化し輸出拠点としての地位確立を狙うほか、加工施設を増強して卸売業者が販売しやすい体制を整える。近くには地域経済活性化拠点として牛肉などを販売する「道の駅」も整備する計画で、新たな観光拠点としても位置づける。

移転予定地には田んぼが広がり、住宅や墓もある

新施設は見沼区宮ケ谷塔の約4万9000平方メートルの敷地に建設する。東北自動車道岩槻インターチェンジ(IC)から約2キロに位置し、輸送面で利便性が高いと判断した。食肉卸売市場とと畜場が一体化した施設で、延べ床面積は約2万3000平方メートル。見学可能な2階建てを予定する。整備費は土地取得費用を含み約220億円。大宮区にある既存施設は解体する。

「和牛」のニーズが海外から高まる中、欧米の輸出基準に合致させた設計とし、東日本の輸出拠点としての地位確立も目指す。

食肉の輸出は、と畜段階から牛・豚など動物ごとに区画を分けるなどといった管理体制に関する基準が国ごとに設けられ、認定を得る必要がある。現在、全国に10ある中央卸売市場・と畜場はいずれも欧米の輸出基準に合致していない。さいたま市によると、東日本の多くの畜産家は牛・豚を欧米に輸出をする際、一度輸出認定を受けたと畜場のある九州に搬出。部位ごとに解体後、再び関東へと戻し、羽田空港や成田空港経由で欧米に輸出しているという。

加工施設も増強する。既存施設では売買した食肉を精肉まで加工することができず、市場で取引した枝肉を各業者が持ち帰る手間がかかっていた。同じ建物内で食肉の売買から加工まで一括でできるようにし、精肉の迅速化、衛生面の強化を図る。

市は移転・新設によって輸出可能かつ加工しやすい施設になれば、収益面の安定にもつながると試算している。卸売り市場・と畜場の運営は30年ほど赤字経営が続いており、と畜頭数の確保に加え、管理体制見直しで黒字化を目指す。

新市場開場にあわせて、国道16号線をはさんだ土地に地域経済活性化拠点も整備する予定。肉を扱うレストランや食肉市場で取り扱われた牛肉などを販売する「道の駅」の開業を目指す。国道沿線で岩槻ICからも近いという立地を生かして、観光客を呼び込む。

さいたま市の清水勇人市長は「農業と食の流通・観光拠点として一体的に整備を検討したい」と期待を寄せている。

■市は丁寧な説明を

食肉中央卸売市場の移転のため、さいたま市が新たに取得する土地は、併せて整備する地域経済活性化拠点を含み約10万平方メートル。土地取得事業としては市が2001年に誕生して以来、最大規模となる。現在、予定地はほとんどが農地として活用されており、地権者はおよそ100人。地権者・周辺住民の理解を得ることは欠かせない。

さいたま市は10月、地域の自治会長ら約20人を対象に事前説明を実施した。出席者からは動物のにおいや鳴き声などを心配する声が挙がった。と畜場では水を多く使用することもあり「どこに水を流すのか」と、農地への影響を懸念する声も出た。周辺に住む住民の一人は「移転は反対。長年住み続けた場所をとられたくない」と話す。

移転先を選定したものの、地権者や周辺住民への本格的な説明はこれから。市には食肉卸売市場移転の意義を丁寧に説明し、土地売却への理解を得る、誠意ある対応が求められている。(伴和砂)

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