米、親イスラエルを加速 和平仲介へ存在感低下
トランプ政権がヨルダン川西岸入植活動容認

トランプ政権
中東・アフリカ
2019/11/19 17:00
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トランプ米大統領はイスラエルとの良好な関係を望むキリスト教福音派を支持基盤としている=AP

トランプ米大統領はイスラエルとの良好な関係を望むキリスト教福音派を支持基盤としている=AP

【ワシントン=中村亮、カイロ=飛田雅則】トランプ米政権が18日、イスラエルによるヨルダン川西岸での入植活動を認める方針に転じた。イスラエルとの良好な関係を望むキリスト教保守派の支持を固め、2020年の米大統領選を優位に進める狙いだ。パレスチナは反発を強めており、中東和平の仲介役としての米国の存在感はさらに下がる。

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 ポンペオ国務長官は18日の記者会見で、イスラエルによる入植活動について「国際法に違反しない」と明言した。

ヨルダン川西岸には約120の入植地が建設され、40万人以上のユダヤ人が住む。生活費の安さに引かれて入植地に移る人は少なくなく、イスラエル国内にはパレスチナへの引き渡しは現実的に難しいとの見方があった。ポンペオ氏は「我々の決断は現実を認めるということだ」と強調した。

イスラエルは1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸を占領して入植活動を開始したが、ジュネーブ条約は占領地への一般国民の入植を禁じている。カーター米政権は78年に「違法」との見解を示し、入植活動を支持しない国際社会と足並みをそろえてきた。

オバマ政権も2016年12月に入植地建設の停止を求める国連決議の成立を容認した。トランプ政権は入植を認めない長年の慣例を事実上ほごにしたことになる。

イスラエルが入植地を拡大するのは、将来のパレスチナとの和平交渉を見越した動きだ。交渉妥結までに建設した入植地は和平実現後に自国領に編入しやすくなると見込んでいる節がある。

イスラエルのネタニヤフ首相は4月の総選挙前にヨルダン川西岸の入植地を併合する考えを表明した。イスラエルでは中道野党連合の組閣が難航し、2回目のやり直し総選挙に突入する選択肢も取り沙汰される。米の方針転換はネタニヤフ氏が率いる右派政党に追い風となる可能性もある。

パレスチナ自治政府は18日の声明で、トランプ政権の決断について「国際法と矛盾する」と強く反発した。「米国はすべての信頼を失い、和平交渉での役割はない」とも断じた。入植活動は過去の交渉で最大の障害の一つだった。米国の方針転換で、和平実現はさらに遠のく公算が大きい。

トランプ政権はこれまでもイスラエル寄りの政策を打ち出し、中東和平の仲介役を事実上放棄してきた。17年12月にイスラエルの首都にエルサレムを承認し、19年3月にはシリアから奪って占領したゴラン高原の主権もイスラエルに認めた。ともに国際社会の総意に反する方針転換で、中東諸国の反発を招いた。

ここに来て入植地も容認するのは、20年大統領選に向けて米国内のキリスト教福音派の支持を固める狙いがある。福音派はキリストが再臨する前にユダヤ人国家が樹立・維持されている必要があると信じ、米国とイスラエルの良好な関係を望む。一方でイスラエルと敵対するイランに手厳しい政策を求める。福音派は米国人の4人に1人を占め、トランプ氏再選のカギを握る有権者層だ。

シリア政策をめぐる混乱も影を落とす。10月には米軍のシリア北部撤収後にトルコが侵攻し、キリスト教徒が迫害される恐れが生じた。米軍不在の隙をついてイランがシリアで勢力を伸ばせば、イスラエルを攻撃する可能性も高まる。トランプ政権を支持してきた福音派の有力者も「撤収を再考すべきだ」と不満を表明していた。

米政権はイスラエルで新政権が発足すれば中東和平案を発表する見通しだ。パレスチナ国家を樹立し、イスラエルと共存させる案がこれまでの和平交渉の前提だったが、トランプ氏はこの前提に従わない考えを示唆したことがある。イスラエルに著しく優位な内容になれば、中東情勢の緊迫がさらに高まる。

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