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味方を輝かせる潤滑油 J1浦和・宇賀神友弥(上)

その1人がピッチに加わると、チームが円滑に回り出す。浦和のサイドバック、宇賀神友弥にはそんなところがある。ぶっちぎりのスピードといった突出したものはなくても、J1で2010年から10季連続2桁試合出場。多くの年で30試合近く出続けてきた。

秘訣は「傾聴力かな」と本人は話す。戦術も起用法も決めるのは監督。その要求に適応するため、何はともあれ、よく話を聞く。誰にでもできそうなことだ。

コーチの指導を受け、自己を客観視する目を持つようになった

宇賀神の場合、自分に対する発言はもとより、FWなど別のポジション、自分に関係なさそうな人間に向けられた言葉にも耳を傾ける。「もし自分がFWならどう動くべきか。それが理解できれば、そのFWの生かし方にも考えが及ぶ」

アンテナを広げると理解の根も深まる。前方にいるFW武藤雄樹がどんなパスを欲しがっているか、後方のDF槙野智章はどう守りたいかが、はっきり見えてくる。味方が輝く順序もわかる。「この戦況なら武藤の出番、次は槙野。たまに俺も前に出ていくよ、と」。攻と守の双方に深く関わり、自分が潤滑油となって全体を動かしている感覚を味わえるのがサイドのポジションの醍醐味だという。

プロ2年目、巡ってきた先発の試合で「俺によこせ」と猛アピールし、ボールを持てば毎回、強行突破をしかけた。生き残るための結果を、という一心。空回りしただけに終わった。

コーチには見抜かれていた。「全部自分でどうにかしようとしていただろう。お前のポジションはそれが仕事じゃない」「お前の走りひとつで他が生きる場面がたくさんあるのがサイド。その無駄走りはお前にとって(得点の)アシストみたいなものだろ?」

「よく聞き・考え・声にする」実践

周りとの相関性にも気を配り、自己を客観視する目を持つようになったのはそれから。よく聴き、自分で考え、声として発する。宇賀神によれば「その順番も肝」。声ばかり大きくて、自分の主張ばかりになれば独りよがりになる。聞く耳があっても、自分で消化して意見として発する変換力がなければ、周囲とは有機的につながらない。

味方へのコーチングとなると、宇賀神は口うるさい。指示は微に入り細をうがち、「お前に染みつくまで言うからな」と念を押す。煙たがられても気にしない。「聞く」「考える」「声にする」を実践する。

31歳となり、若手に追い上げられる立場になった。でも、周りを生かす長所には若さだけでは出せない味がある。「どんな選手と合わせても、誰をも輝かせる選手でありたい」。その道のプロフェッショナルとして生きる。=敬称略

(岸名章友)

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