力失うOPEC、12月に再び試練(The Economist)

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2019/11/18 23:00
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石油輸出国機構(OPEC)の加盟各国は今、明るい展望を描けずにいる。気候変動に対する懸念から、石油需要は今後数十年で徐々に細っていく可能性がある。加えて石油市場におけるOPECの力は、急速に衰えている。国際エネルギー機関(IEA)は13日に発表した世界エネルギー見通しで、2030年のOPEC加盟国と非加盟国ロシアによる産油量は、世界全体産油量の47%しか占めないと予測した。

9月にサウジの新たなエネルギー相に就任したサルマン国王の息子、アブドルアジズ王子は協調減産に向けて重責を負う。王族がエネルギー相に就くのは同国建国以来初めてだ=ロイター

9月にサウジの新たなエネルギー相に就任したサルマン国王の息子、アブドルアジズ王子は協調減産に向けて重責を負う。王族がエネルギー相に就くのは同国建国以来初めてだ=ロイター

だが、OPECはもっと喫緊の課題を抱えている。

19年の世界の石油需要は予想以上に低迷している。米調査会社サンフォード・C・バーンスタインの予測では、今年の需要の伸びは前年比わずか0.8%と金融危機以降で最も低い伸びにとどまる。

OPEC加盟国はウィーンで12月5日に総会を開き、翌6日にはロシアなど非加盟国と構成する「OPECプラス」の会合を開く。第1の問題は、OPECプラスが石油価格を下支えするために新たな計画を発表するかどうかだ。第2の問題は、もし新たな価格下支え策を発表したとしても、加盟各国がそれを守るかどうかだ。

■サウジは減産枠の倍以上減産してきたが

厳密には、価格維持政策は既に実行に移されている。OPECプラスは18年12月、原油価格を押し上げるために日量120万バレルの協調減産を発表した。この合意は今年7月に20年3月まで延長することが決まった。だが、イラクやナイジェリアなど一部の加盟国は、昨年の合意で認められた上限を頻繁に超えて原油を産出している。

ロシアはOPECの新たな時代への移行を支えるはずだった。だが、協調減産に合意した時点の産油量がそもそも通常よりも多かったにもかかわらず、今年の実際の産油量はそれに基づいて決められた割当量を超えている。ロシアの石油業界は「協調減産でいら立ちを募らせている」と米調査会社IHSマークイットのアーロン・ブレイディ氏は指摘する。

その結果、協調減産合意後のこれまでの19年のロシアの1日当たりの平均産油量は、合意前の18年の平均を上回っている。

そのためサウジアラビアがロシアの増産分をも調整してきた。例えば、7~8月には昨年の合意で定めた量の2倍以上の減産を実施している。

■2019年、従来なら原油価格は高騰していた

しかし、こうした取り組みでは原油価格を引き上げるには不十分だということが明らかになっている。一見すると今年、価格は上昇してもおかしくなかったはずだった。

埋蔵量が世界最大のベネズエラと4位のイランに米国が経済制裁を科したことから、両国の原油輸出量は減っている。ペルシャ湾ではタンカーの拿捕(だほ)が相次ぎ、OPEC第2の産油国であるイラクは国民による反政府デモで身動きが取れなくなっている。さらに9月には、サウジの石油施設がドローンによる攻撃を受け、同国の産油量は一時、半減した。その被害の規模は、1979年のイラン革命や90年のイラクによるクウェート侵攻の際よりも深刻なものだった。

それでも原油市場には、こうした逆風の影響は一切表れていない。IEAのファティ・ビロル事務局長は「以前なら、こうした地政学的な緊張が高まれば、原油価格は高騰していた」と指摘する。国際指標である北海ブレント原油先物は直近の高値だった4月の1バレル75ドル弱から、今では60ドル前後に下がっている。

この理由の一つは米シェールオイル各社が増産し続けたからだ。米国の9月の1日当たりの産油量は18年の平均に比べ12%増えた。景気減速により日本だけでなく、堅調な石油需要が見込まれていたインドや東南アジアで需要が低迷しているのも原油価格が低迷している一因だ。

20年に経済成長は加速するかもしれない。米シェール各社の投資家は、支出を抑え利益を増やすよう圧力を強めている。そうなれば生産の伸びは止まり、その結果、価格はいくぶん上昇するだろう。

もっとも、他の地域からの新たな原油の供給が今後、価格を反対方向に、つまり、押し下げることになりそうだ。米石油大手エクソンモービルは南米の小国ガイアナの沖での生産を増やしつつある。ブラジルが6日に実施した大規模な海底油田「プレサル」の権益を巡る入札は、エクソンモービルや英石油大手BPなどのスーパーメジャーが応札せず、失敗に終わった。だがIHSマークイットは、この海底油田には既に資金が投じられているため、21年までにはブラジルの産油量は19年より18%増える可能性があるとみる。

ノルウェーも増産に向かっている。同国の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金は10月に石油探査や石油生産を手がける企業の株を手放す方針を明らかにしたが、ノルウェー自体の産油量は今後、数年で大幅に増える見通しだ。ノルウェー政府が大株主である石油大手エクイノールは10月、北海の新たな巨大油田ヨハン・スヴェルドラップで原油の生産を始めたと発表した。

従って、OPECプラスは12月の会合で、昨年合意した協調減産を継続するか、それともさらなる減産に踏み切るか決断しなくてはならない。現行の協調減産では北海ブレントを60ドル以上に保てない可能性があるからだ。それでも今よりも大幅な減産を望む加盟国はほとんどないかもしれない。

■アラムコにとって最悪は上場後の価格低迷

サウジの国営石油会社サウジアラムコは、OPEC総会直後の12月中旬に株式を一部上場する計画だ。サウジがさらなる大幅な減産をするといった合意に至れば、アラムコの利益低下が見込まれるため、企業価値も下がることになる、とバーンスタインのニール・ベバレッジ氏は指摘する。

一方で「アラムコにとって最悪なのは、上場は果たせたものの、その後、石油価格が暴落することだ」とも同氏は指摘する。今年は石油市場にとっては激動の1年となっているが、12月にもう一波乱あるかもしれない。

(c)2019 The Economist Newspaper Limited. November 16, 2019 All rights reserved.

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