スリランカ大統領選 親中派・前大統領の弟が勝利
野党候補ラジャパクサ氏 中国接近の可能性も

南西ア・オセアニア
2019/11/17 21:12
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スリランカ次期大統領に就任する見通しとなったゴタバヤ・ラジャパクサ氏(16日、コロンボ)=ロイター

スリランカ次期大統領に就任する見通しとなったゴタバヤ・ラジャパクサ氏(16日、コロンボ)=ロイター

【コロンボ=早川麗】16日投開票のスリランカ大統領選で選挙管理委員会は17日、親中派の前大統領の弟で野党候補のゴタバヤ・ラジャパクサ元国防次官(70)が当選したと発表した。対立候補で与党側のサジット・プレマダサ住宅建設・文化相(52)は敗北を認めた。ラジャパクサ氏は近隣諸国との関係強化を訴えてきたが、中国の影響力が再び強まる可能性があり、同氏のかじ取りを隣国のインドや日本など国際社会は注視している。

地元メディアによると、得票率はラジャパクサ氏が約52%、プレマダサ氏が約42%。投票率は約80%だった。日本人を含む250人以上が死亡した4月の連続爆破テロを受け、内政では治安の回復や経済復興などが争点だった。

ラジャパクサ氏は選挙で「国家の安全」を最優先に掲げて支持を得た。同国では1980年代から多数派で主に仏教徒のシンハラ人と、独立を求める少数派でヒンズー教徒中心のタミル人が対立する内戦が続いた。ラジャパクサ兄弟は、兄のマヒンダ氏が大統領だった2009年に26年に及ぶ内戦を終結させた実績があり、元国防次官のゴタバヤ氏の治安回復への手腕に期待が集まったとみられる。

国際社会は次期政権の中国との距離に注目している。スリランカは人口約2100万人の小国だが、海上交通の要衝として、中国とインドの両大国が安全保障戦略上、大きな関心を持つ。中国は自国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」でスリランカを重視。一方、中国の動きに対してインドや「自由で開かれたインド太平洋」構想を提唱する日米は、警戒感を強めている。

兄のマヒンダ氏が大統領を務めた05~15年、中国からの多額の投融資で港湾などを整備したことで中国の存在感が高まった。ラジャパクサ氏が大統領に就任すれば、親中路線に回帰するとの懸念がかねて持たれていた。

国際社会の警戒を意識してか、ラジャパクサ氏はマニフェスト(選挙公約)で「近隣アジア諸国との関係を強化する」と主張し、バランス外交を展開する姿勢を示した。特にインドとは地域の安定のために緊密に連携すると明記した。

インドも南アジアに経済圏を広げる中国をけん制する狙いで、近隣諸国との関係に重きを置く。モディ首相は5月の総選挙で再選を果たした後、最初の訪問国にモルディブとスリランカを選んだ。17日には他国首脳に先駆けてツイッターでラジャパクサ氏に祝意を示し、「両国の兄弟のように強く親密な関係を深めるため、ともに働くのを楽しみにしている」と述べた。

外交筋は「選挙公約を信じれば兄の政権のときのように過度に中国に依存するとは考えにくいが、懸念は残る。引き続き注視が必要だ」と話す。

ただ国内では中国投資に期待する声も根強い。ラジャパクサ氏に投票したというコロンボ市内の男性は「彼なら中国などからの投資を呼び込み、経済を発展できる」と話す。4月のテロで痛んだ経済へのテコ入れ期待が大きい。

国際通貨基金(IMF)によると、19年の実質国内総生産(GDP)の伸び率は2.7%と、18年の3.2%から減速する見通しだ。スリランカ中央銀行が見込む、潜在成長率5%程度を大きく下回る。中銀は5月から2回利下げし、景気の刺激に動いている。

GDPの6%を観光で稼ぐ同国にとって、テロ後の訪問客の減少は他産業にも響き、経済全体への打撃が大きい。政府の統計によると同国を訪れた外国人観光客は4月以降、減少が続く。1~10月の累計観光客は約149万人と前年同期間に比べ21%減った。

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