パー5をすべてパーであがる逆算攻略術(下)
―─フェアウエーウッドをうまく打つコツはありますか?
小暮 フェアウエーウッドを使うなら、飛ばそうとしないでリラックスして打つことが一番です。また、素振りを3回して地面を打ち、どこの芝をヘッドが擦るかを確認すること。そして、擦る場所にボールを置いて打つことです。そうすればうまく当たってくれますから。それを教科書通りに左足かかと延長線上にボールを置いて打つから、ボールまで届かずにトップなどのミスを犯すのです。フェースが開いてスライスになることもあるでしょう。
―─体が固まってしまった場合はどうしたらよいですか?
小暮 畑岡奈紗選手ではないですが、その場で5回ジャンプしてみましょう。関節が柔らかくなります。肩の上げ下げを行うだけでも緊張がほぐれます。アドレスしてからすぐに打てないときは緊張から体が動きにくくなっている証拠です。それでもリラックスできないようなら、自信のあるクラブに持ち替えることです。
―─このセカンドショットはやはり左のクロスバンカーや右の林が気になりますし、フェアウエーも狭い。自分なら距離が残っても7番アイアンを使いたいです。
小暮 それでいいです。この場面、7番アイアンがスッと持てる人は強い人です。もちろん、フェアウエーウッドが持てる人も上級者ですが、アベレージゴルファーなら7番アイアンは正解でしょう。まずは目の前のトラップを避けることが大事ですので。
―─実際、小暮プロは7番を使い、フェアウエーセンターをキープしました。
小暮 私でなくてもここに打つことはできたと思います。それもラフからでもここに打てたでしょう。こうしてセカンドショットでの危険は無事に回避できました。大事なのは次のサードショットですね。ピンまでは170ヤードあります。
―─フェアウエーだし、ピンも正面に見えているし、普段ならユーティリティーでピンを狙ってしまうでしょうね。
小暮 ライをよく見てください。芝の状態は良いのですが、少しつま先下がりなのです。この少しが長いクラブを持つと致命的になる。スライスして右手前のバンカーに入れることになります。実際、生徒と回るとこの結果が多いのです。
―─この傾斜は見過ごしていました。
小暮 そうでしょう。ピンが見えると、もうピンばかりに目が行ってしまう。狙いたくて仕方ないわけです。それは人間の本能。でも、それに気がついて、しっかりと4オン計画を実行することです。
―─そのためにホール図を見て計画を立てたのですからね。
小暮 その通りです。ここでは右手前のバンカーに入れたくないので、大事をとってバンカーまで届かない距離を打ちましょう。つまり、計画を少し変更してグリーンから20ヤード手前の花道でなく、40ヤード手前に打ちます。使うクラブは8番アイアンで130ヤード打つことにします。
―─小暮プロはきちんとバンカーを避けて、花道に打ちました。
小暮 ここからピン下2メートルにどう寄せるかです。ランニングが得意な人は8番とか9番アイアンの転がし、ピッチエンドランが得意な人はピッチングやアプローチウエッジを使う。8番がうまく寄りそうなのでやってみますね。



―─グリーンエッジを越えたところに落として見事にピン下2メートルにつけました。結果は惜しくもバーディーパットが外れたけれど、しっかりとパーが取れました。ティーショットからすべてのショットが危なげなく、トラップにつかまらず、言ってみれば簡単にパーが取れてしまいました。
■短めのパー5、3オン計画で実際にパーを取る
小暮 もう一つ、今度は短めのパー5を3オン計画で攻略してみましょう。
―─久邇の西のスタートホール。左ドッグレッグの471ヤード、パー5ですね。
小暮 このホールも打つ前にホール図とピン位置をしっかり確認します。ピンは右奥にあり、グリーン左手前にガードバンカーがあります。バンカーに入れるとピン下2メートルに寄せにくいのでバンカーは避ける。3オン計画ですから、ピン手前5メートルから100ヤードバックしたポジションを3打目地点とします。そこから170ヤードバックしたところがセカンドポジション。100+170=270ヤードとなるので、ティーショットはおよそ200ヤード飛ばせばよいことになります。
―─そう計画すると、かなり3オンが実現できそうな気がします。
小暮 ですから、ホール図で計画を立てることが大事なのです。そうして、先程と同じようにティーイングエリアから眺めて、トラップの確認をします。まずは左のドッグレッグコーナーに見える池です。計測器でチェックすると、池の手前まで142ヤード、越えるには202ヤード必要です。
―─しっかり計測器でトラップまでの距離を測ることが大事ですね。
小暮 その通りで、池までの距離を正確に測っておけば避けるにしても越すにしても安心できます。越えるのに202ヤードとなれば、飛ぶ人はドライバーを使いたくなるでしょうが、仮に真っすぐ飛んでしまうとフェアウエーを突き抜けて斜面のラフに入る。それでも4オン計画にはできますが、クレバーな選択ではありません。ここはフェアウエーを突き抜けず、素直に正面のフェアウエーに打つことがセオリーでしょう。となれば、スプーンやクリークでもよいのですが、左の池を避けるためにドライバーを使ってゆったりスイングで打つことにします。
―─小暮プロのティーショットは右サイドからのドローショットで、正面のフェアウエーセンターでした。
小暮 うまく打てましたね。やはり200ヤード打てばいいと思えば力まなくていいので楽ですね。ここからピンまで276ヤードです。
―─ピンが正面に見え、前が開けているので、フェアウエーウッドで飛ばしたい気持ちになります。
小暮 せっかくティーショットを刻み気味で打ったのに、ここから長いクラブを使って思い切り打つのですか? その計画変更は得策ではありません。というのも、仮にスプーンを使ってもグリーンには届かない。少し前足上がりのライなのでフックすることもある。グリーン左サイドにはOBもあります。しかもグリーンから離れたクロスバンカーに入る可能性もある。ここからのショットは難度が高いです。パーを確実に取るならば、ここは計画通りにピンから100ヤード手前にしっかりと刻むことです。
―─了解しました。納得です。
小暮 ですからユーティリティーで170ヤードをしっかりと打ちます。少しフックが出ることを想定して、狙いをやや右にしてリラックスして打ちましょう。どうせグリーンには届かないわけです。緊張する必要などどこにもありません。
―─その通りの脱力したナイスショットでした。3打目はピンまで104ヤード。ウエッジならばピンから5メートル手前に落とせば、ピン下2メートルにつけられると言っていました。約99ヤード打てばよいですね。
小暮 その通りですが、そこまで細かく考えずにざっくり100ヤードを打ちましょう。50度のウエッジでまさにピン下2メートルにつけることができました。ここからカップまでのラインを読むと指3本分のフックラインに見えます。1本ならカップセンター、2本でその内側、3本ならカップ右端の内側です。つまり、2メートルのパットなら、指3本まではカップを外してはいけないのです。
―─なるほど、浅く直線的に狙うのですね。自分でこのラインを見ると、カップ際を狙いたくなります。
小暮 大事にいこうとすればさらに膨らましたくなりますよね。でもそうしたら入らない。カップ際が狙いでも入れたい気持ちから少し強めになって、カップの縁を通り過ぎてしまうことが多い。ここは狙いをカップ右端内側と、カップを外さなければ多少強く打っても弱めでも届けば入ってくれる。2メートル以内の上りのストレート目はカップをはずさないを原則にしてみてください。
―─小暮プロはピン下2メートルのパットをものの見事に沈めてバーディーを奪いました。



小暮 でも、少しも驚くことではありません。ティーショットを200ヤード打って、セカンドショットを170ヤードに抑え、100ヤードのサードショットをグリーンに乗せる。アベレージゴルファーでも難しいことではありません。パーは確実、バーディーも取れる攻略法なのです。このように攻めれば90切りは簡単、80切りもできてしまう。問題はまったくありません。
―─確かにその通りですね。小暮プロの攻略法はパー5だけでなく、パー4やパー3にも応用できる。まずは事前にホール図やピン位置を見て、パーオン計画か、ボギーオン計画かを考える。そして実際にティーイングエリアに立ってから、ハザードを確認してその計画が実行できるかを検討する。ハザードはしっかり避けること。力まずにリラックスして打つ。刻めれば刻んで攻める。それも自信のあるクラブを使っていく。そうしてピン下2メートルにつける。実行できれば本当に70台であがれそうです。
小暮 心配しなくても実行できます。しっかり攻略法を考えて欲を捨てれば必ず達成できますから。小暮を信用してください。
(文:本條強、撮影協力:久邇カントリークラブ)