カンボジア、野党支持者を釈放 EU制裁回避へ譲歩

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2019/11/15 19:16
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フン・セン首相(右)は制裁回避に向け動き始めている(10日、プノンペン)=ロイター

フン・セン首相(右)は制裁回避に向け動き始めている(10日、プノンペン)=ロイター

【ハノイ=大西智也】カンボジアのフン・セン首相は、逮捕された約70人の野党支持者らの釈放手続きを準備するよう法務当局に指示した。14日の地方演説で明らかにした。野党弾圧を理由に欧州連合(EU)が検討する同国への経済制裁を回避する狙いだ。一方、野党指導者サム・レンシー氏の帰国は阻止する構えで、今回の譲歩が2020年2月に予定されるEUの最終判断に影響するかどうかは不透明だ。

現地報道によると、15日までに約30人が釈放された。野党支持者らは、9日の独立記念日に帰国を予告していた海外滞在中のサム・レンシー氏に同調し、クーデターを計画したなどの容疑でここ数カ月間で逮捕されていた。フン・セン氏は野党支持者らが「サム・レンシーにだまされた」との認識を示した。

フン・セン政権は10日、サム・レンシー氏が15年に海外に出た後、旧最大野党、カンボジア救国党の党首を務めたケム・ソカ氏の自宅軟禁措置を解除していた。こうした野党側への一連の措置により、EU側に人権で一定の譲歩を示した。サム・レンシー氏の帰国阻止を確信し、野党側への締め付けをある程度緩めても、国内は混乱しないと判断した。

フランスを中心に海外で活動するサム・レンシー氏は8月、独立記念日に帰国すると宣言した。フン・セン政権は周辺国にも協力を求めて阻止する構えをみせた。サム・レンシー氏は隣国タイから陸路、帰国する計画だったがタイ政府に拒まれた。14日にはマレーシアからインドネシアに入り、同国の闘争民主党の国会議員らと面会した。16日まで滞在の予定だ。

EUはカンボジアに製品の大半の関税を免除する優遇策を適用している。同国はこの特恵関税制度を利用し、総輸出の約4割をEUに向ける。世界銀行によると対EU輸出額は18年で46億ドル(約5000億円)。衣服や履物など縫製業の製品が中心だ。

EUはフン・セン政権の野党弾圧を問題視し、特恵関税の適用を停止するかどうか検討している。12日には1カ月以内に改善策を示すようカンボジア政府に求めた。

フン・セン氏は制裁回避を優先する考えだ。制裁で輸出が減れば、縫製業が打撃を受ける。多数の労働者を雇用する縫製業はフン・セン氏の重要な政治基盤の一つだ。そのため、最低賃金を大幅に引き上げ、自ら工場に出向いて労働者に支持を訴えてきた。すでに30年以上も首相を務めてきたフン・セン氏にとって縫製業を守ることは、今後の権力維持にも必要となる。

自宅軟禁を解かれたケム・ソカ氏は13日、カンボジアに駐在するEUのモレノ大使とプノンペンで会談した。同日には日本の三上正裕大使とも会って話した。日本政府は内戦終結後のカンボジアの復興や民主化に深く関わってきた。EUとも連絡をとっている可能性がある。

ケム・ソカ氏は国家反逆容疑で17年9月に逮捕された。カンボジア最高裁は同年11月、政府転覆容疑に関与した疑いで同氏が創設に参加したカンボジア救国党に解党を命令した。ケム・ソカ氏の身柄は18年9月、自宅軟禁に移されていた。

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