自動マニキュアや爪替え放題も 時短サービス続々
爪を彩るネイルの分野に参入する異業種が目立ってきた。カシオ計算機は化粧品大手のコーセーと共同で、機械が自動で人の爪にマニキュアを塗る「ネイルプリンター」を開発した。人工知能(AI)が爪の形状を検出し、スマホの画像をもとにプリントを描く。12月からコーセーの店舗に試験導入し、2022年3月末までに事業化する。時短ニーズを背景に成長を続けるビューティ市場に参入し、新たな収益の柱に育てる。

カシオは人の手を機械に差し込むことでネイルアートを施す装置を開発した。スマートフォンの専用アプリから画像を送信することで、あらゆる写真データなどを爪に転写できる。プリントに使う溶液はコーセーが自社のマニキュアをもとに開発し、装置向けに提供する。
爪の形状を把握するために必要な専用のコート剤を塗る時間を含め、ネイルアートの完成までにかかる時間は両手で約10~15分。人力でマニキュアを塗る場合に比べて約4分の1ほどの作業時間だという。ネイルサロンに導入すれば、ネイリストの省力化・省人化にもつながる見込みだ。
ネイルプリンターは東京・銀座で12月にオープンするコーセーの開発中の商品を無料体験できる新型店舗「メゾン コーセー」に試験導入する。顧客には店舗で会員登録してから使ってもらい、どういった属性の顧客層が興味を持ったかを調べられるようにする。
将来はアジアや欧州などでも実証実験を実施する計画だ。装置で描かれたネイルアートの画像を共有するプラットフォームも開発中で、今後はそこからデザインをダウンロードしてユーザーが自分の爪にプリントできるようにしていきたい考えだ。

21年度末までに商用化し、ネイルサロンやヘアサロンなどへの導入を促す。プリントした分だけ利用料を徴収するか、月額で決まった金額を徴収するサブスクリプション(定額制)制にするかは今後検討していく。
英ユーロモニターによると、18年の国内ビューティビジネスの関連市場規模は約375億4600万ドル(約4兆872億円)。なかでも時短ニーズの顕在化からネイルプリンター市場は24年には18年比約1.4倍の7640万ドル(約83億円)にまで成長する見通し。世界規模でみると、24年には8億9330万ドル(約972億円)に達する見通しで、海外でニーズは強い。
カシオ以外でも異業種の参入も目立つ。大丸松坂屋百貨店は他社と共同で定額で付け替え放題のネイルサロンを開設。19年10月から試験導入し、来年以降の商用化を目指す。東芝もつけ爪を3Dプリンターで製造する実証実験を17年5月に実施し、数年以内の商用化を目指す。
(企業報道部 高木雄一郎、河端里咲)
[日経産業新聞 2019年11月13日付]
