京丹後の螺鈿織り、細糸に宿す虹色の輝き
匠と巧

関西タイムライン
2019/11/18 7:01
保存
共有
印刷
その他

薄く削り出した貝殻の真珠層を和紙に貼り付ける=小幡真帆撮影

薄く削り出した貝殻の真珠層を和紙に貼り付ける=小幡真帆撮影

貝殻の内側で虹色に輝く「真珠層」は、薄く削り出して漆器などにはめ込む伝統技術「螺鈿(らでん)」の素材として有名だ。この真珠層を帯や着物に織り込む「螺鈿織り」と呼ばれる技術がある。民谷螺鈿(京都府京丹後市)の2代目、民谷共路さん(50)は帯だけでなく、高級ブランドのオートクチュール向けの生地開発にも取り組む。

螺鈿織りの技術を開発したのは、民谷螺鈿の創業者にあたる先代、民谷勝一郎さん。昆虫好きの顧客から「標本の蝶(ちょう)を1匹丸ごと織り込んだ帯を作れないか」と依頼されたのがきっかけだ。蝶は胴体部分を織り込むのが困難で断念したが、美しさを表現する方法を模索するうち、正倉院展で出合った螺鈿の装飾の鏡の美しさにうたれ、2年かけて開発した。

原料となる貝は、沖縄産の夜光貝やニュージーランド産のアワビなど多種多様だ。まず、真珠層を0.1~0.2ミリメートルほどの薄さに削り出し、割れないように特殊な樹脂でコーティング。それを和紙に貼り付け柄模様を描き出す。それから糸状に裁断し、横糸にして織り込む。和紙に金箔や銀箔を薄く塗り糸状に裁断して生地に織り込む「引箔」の伝統技法を応用した。

通常の「引箔」の工程では、貼り付けを専門の職人に外注するのが一般的だが、民谷螺鈿では自社で手掛ける。「自分たちで貼りの工程も手掛けることで、繊細な図柄が可能になる」(民谷さん)ためだ。

貝殻は非常に割れやすい。破片が周囲の糸を切断することも多い。「当初は糸状に裁断するのを職人に断られることも多かった」という。夏冬の気候差でのりがはがれたり、逆に粘着力が強くですぎたりすることもある。そのため、自社でコーティング材やのりの配合を編み出し、和紙への貼り方も工夫を重ねた。類似の商品を扱う後発事業者は他にもあるが、「図柄の細やかさで右に出る者はいない」と自負する。

現在、螺鈿織りの9割は帯だ。手の込んだものは製造に1カ月ほどかかり、価格も200万円の高値がつく。動きに応じて独特の照り方をする帯には愛好家が多く、上皇后さまも公務の際に幾度か身につけられたことがある。とはいえ生活様式の変化で、和装だけでは今後生き残りが難しい。

民谷螺鈿は2006年から海外展示会に出品を始めた。試行錯誤を重ね、木や竹、漆、革、鏡などを薄く加工し裁断して織り込んだ生地も開発。会場で出会ったデザイナーから「会場でここの布が一番いい製品だ」と言われ、仏高級ブランドのコレクションに生地が採用された。直近では中国発の高級ブランド「グオ・ペイ」のオートクチュールにも採用が決まっている。

京都府北部では、名産の丹後ちりめんが来年で誕生から300年の節目を迎える。ソファ生地など、インテリア製品への進出も視野に入れる民谷さんは「次の300年に向けて意欲的に挑戦する産地でありたい」と語る。

(山本紗世)

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]