ローマ法王、38年ぶり来日、アジア重視の姿勢鮮明

ヨーロッパ
2019/11/17 23:00
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フランシスコ法王は笑顔やきさくな態度から人気が高い(バチカン)=ロイター

フランシスコ法王は笑顔やきさくな態度から人気が高い(バチカン)=ロイター

キリスト教カトリックの最高指導者、ローマ法王フランシスコが23~26日、日本を訪れる。法王の来日は1981年のヨハネ・パウロ2世以来38年ぶり。被爆地である広島と長崎を訪問し平和のメッセージを発信する。東京では東日本大震災の被災者と面会する。法王はアジア重視の姿勢を鮮明にしており、カトリック教会の総本山であるバチカンの外交でも重要な意味を持つ。一方で、日本にとっても国際政治で影響力が極めて大きいバチカンとの距離を近づける絶好の機会となる。

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法王は2013年の就任時から訪日に意欲を示していたとされる。14年には安倍晋三首相がバチカンで法王と会談し、訪日を招請した。ただ、断交中の中国との関係改善を模索しているなかでの訪日には慎重論が多かったほか、聖職者による児童虐待問題の対応に追われ計画が進まなかった。だが、18年9月に中国とは司教の任命権問題で暫定合意し和解へ踏み出した。新天皇の即位のタイミングを見計らっていたともされ、ようやく今回の訪日にこぎづけた。

24日に長崎と広島を訪れる。長崎では原爆が投下された爆心地公園から核兵器根絶に向けたメッセージを読み上げる。豊臣秀吉のキリシタン弾圧で信者らが処刑された日本二十六聖人殉教地も訪れる。広島では平和記念公園で「平和のための集い」を開く。25日には東京で天皇陛下や安倍首相と会談するほか、東日本大震災の被災者とも会う。東京ドームで大規模なミサも予定されている。

法王はブエノスアイレスの中流家庭で育ち、大司教になってからもバスや地下鉄で移動するなど「庶民派」として知られる。世界平和の実現を呼びかけるのは歴代法王も同じだが、特にフランシスコ法王は熱心だ。これまでもパレスチナ自治区の難民キャンプに足を運んだほか、内戦下にあるアフリカ諸国も訪問した。紛争や自然災害の被害者や、貧困層へ寄り添う姿勢が強い。

米国やロシアなど大国が核兵器の増強に動く中、14年には「人類はナガサキ、ヒロシマから何も学んでいない」と警鐘を鳴らした。今回の長崎と広島への訪問は法王の並々ならぬ思いがある。被爆地から世界に向けどのようなメッセージを発信するか注目が集まる。

信者拡大を目指すバチカンの外交戦略としての意義も大きい。カトリック信者は全世界に約13億人いるが、お膝元の欧州や南米では高齢化や改宗を理由に離反するなど「退潮」を指摘する声は多い。バチカンにとってはキリスト教が主流ではないアジアは開拓余地が大きい。在位中に一度もアジアを訪れなかった前法王ベネディクト16世とは対照的に、法王は韓国やフィリピンを訪れるなど、アジア重視の姿勢を打ち出している。

16世紀に中国や日本への布教を進めたイエズス会の出身ともあって、日本での布教活動は若い頃から希望していた。バチカンでの演説で江戸時代の禁制期に信仰を続けた「潜伏キリシタン」を念頭に、「信仰と祈りを守り生き延び、この出来事から多くのことを学ぶことができる」と称賛したこともある。日本のカトリック信者数は約44万人と減少傾向が続くなか、法王の訪日が今後の布教に重要な役割を果たす可能性もある。

一方、日本にとってもまたとないチャンスである。バチカンは世界最小の国だが、国際社会での影響力は圧倒的に高い。法王は15年に米国とキューバの国交回復を仲介した。今年2月にはベネズエラのマドゥロ大統領が反政府側との仲介を要請する書簡を法王に送った。バチカンは各国の司教を任命し、教会のネットワークは世界各地に広がっている。そこから吸い上げられる情報量はすさまじく、大国も一目置くほどだ。日本政府は「日本とバチカンの2国間関係を一層強化する契機になることを期待している」(菅義偉官房長官)。日本がバチカンとの協力関係から得られるものは多い。

(ジュネーブ=細川倫太郎)

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