マレーシア経済減速 7~9月期4.4%成長
【シンガポール=中野貴司】マレーシア中央銀行が15日に発表した2019年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比で4.4%増にとどまった。中国や東南アジア域内向けの輸出が低迷したほか、GDPの6割弱を占める個人消費も勢いが衰えている。4~6月期の4.9%増から伸び率が低下した。

7~9月期の輸出は前年同期比で1.9%減と、4~6月期の0.4%減からマイナス幅が拡大した。最大の輸出先である中国向けが8月、9月と2カ月連続で減ったのに加え、9月はシンガポールやタイ、ベトナムなど近隣国向けの輸出も4~12%の減少となった。
アジアのサプライチェーン(供給網)の一角を占めるマレーシアは中国経済減速の影響を受けており、9月は輸出品目上位の電機、石油、化学がいずれも2ケタの落ち込みとなった。米国から制裁関税が課されている中国の代替拠点としての需要が増え、米国向け輸出は増加を維持しているものの、全体の減少を補うには至らなかった。
これまでGDPの伸びをけん引してきた個人消費も4~6月期の7.8%増から7%増に減速した。17年から18年にかけて10%前後だった製造業の給与の伸びが約3%にまで下がり、消費者が支出を抑えた。GDPの2割を占める公的部門も、財政再建を優先する政府の歳出削減が響き、4.6%のマイナス成長だった。
産業別ではサービス業が5.9%増と堅調だった一方、建設業や鉱業はマイナスに転じた。
輸出主導型のマレーシア経済は、10~12月期以降も中国をはじめとする世界経済の減速の影響を色濃く受ける見通しだ。英調査会社キャピタル・エコノミクスのアレックス・ホルムズ氏は「政府が歳出の抑制を続けることもあり、20年の成長率は4%にとどまる」と予測する。
マレーシア中銀は8日、市中銀行から預かる資金の比率である預金準備率を引き下げた。銀行に融資の増加を促し、景気を刺激する狙いだ。20年には政策金利の引き下げに踏み切る可能性がある。
通貨リンギは1ドル=4.1リンギ台と下落基調から脱しておらず、新興国の通貨安が再び進む局面になれば下落に拍車がかかる恐れがある。
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