ドイツ経済、続く低空飛行 2期ぶりプラス成長、「景気後退」は回避

ドイツ政局
ヨーロッパ
2019/11/14 18:46
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【ベルリン=石川潤】ドイツ連邦統計庁は14日、2019年7~9月の国内総生産(GDP)が実質で前期比0.1%増加したと発表した。4~6月期に続く2四半期連続のマイナス成長は回避したが、ゼロ近辺での低空飛行が続く。米中貿易戦争による製造業の落ち込みがサービス業などにも広がるなど予断を許さない。経済界などで財政出動を求める声が強まっているが、独政府は慎重姿勢を崩していない。

ドイツ経済は今後、財政を拡大するかが焦点となる(メルケル首相)=ロイター

米欧では2四半期連続のマイナス成長を景気後退(テクニカル・リセッション)とみなすことが多い。ドイツの6年半ぶりの景気後退局面入りを警戒する声が多かったが、何とか逃れた。消費の強さが設備投資の弱さなどを補った。

欧州経済をけん引して「一人勝ち」とまでいわれたドイツ経済が力強さを欠くのは、米中の貿易戦争や英国の欧州連合(EU)離脱交渉などで世界全体の貿易の伸びが落ちているためだ。ドイツの輸出依存度(GDPに占める輸出の割合)は47%と、日本(18%)などを大きく上回る。世界景気の変調を映しやすい経済構造で、ドイツの9月の鉱工業生産は前年比で4.3%も減少した。

特に深刻なのが、1~10月に生産が前年同期比9%、輸出が同12%も落ち込んだ自動車だ。景気が低迷する中国市場への依存が裏目に出たほか、ディーゼル車に注力して環境対応が後手に回ったことも響いている。機械や化学などの関連産業に余波が広がり、GDP全体を押し下げている。

「自動車業界に表れつつある危機に先んじて対応する」。独自動車部品大手のコンチネンタルのデゲンハート社長は9月、約2万人のリストラを発表した。同じ部品大手のボッシュやマーレ、鉄鋼・機械大手のティッセン・クルップなども人員削減を急ぎ始めた。

ドイツの失業率は3%台と東西統一後で最低の水準だ。安定した雇用が消費を呼び込み、ぐらつく経済を下支えしている構図だ。だが、製造業の停滞が長期化すれば、雇用市場にも影響はじわり及んでくる。独Ifo経済研究所の企業景況感指数は製造業だけでなくサービス業でも悪化が進み始めている。

「ドイツの減速の影響が広がってきた」。ポーランド大手、ペカオ銀行のクルピンスキ最高経営責任者は20年の同国の成長率が19年より1ポイント程度下振れするとみる。独自動車産業のサプライチェーン(供給網)は欧州中に張り巡らされており、ドイツの低迷は地域全体の成長の足かせになる。

ドイツ政府が景気を再浮上させるために財政出動に動くかどうかが今後の焦点となる。金融政策が限界に近づくなか、欧州中央銀行(ECB)などは財政に余裕のあるドイツが自ら景気の下支えに動くべきだと主張するが、メルケル政権は危機のリスクは低いと反論する。

ショルツ財務相は「すでにかなり拡張的な財政政策を取っている」と主張する。財政黒字を維持しながらも、税収の増加分を使って20~23年には過去を3割程度上回る年400億ユーロ(約5兆円)を投資する計画を立てる。21年には旧東独支援のために導入された連帯税の大幅縮小で100億ユーロ規模の減税に踏み切る。

問題はこれが景気後退の回避に十分かどうか。ドイツ国内でも成長につながるインフラ投資を政府は加速させるべきだとの意見は強い。一方で、製造業と対照的に建設業の景況は過熱気味で、投資拡大の効果を疑問視する向きもある。

ドイツ政府は19年の経済成長率を0.5%、20年を1%とみている。メルケル政権は危機のリスクが高まれば大規模な財政出動に動くと約束しており、政府の回復シナリオが崩れれば、大規模な財政出動がいよいよ現実味を帯びてくる。

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