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陽気なブギ、現代励ます 笠置シヅ子たどる音楽劇

文化の風

音楽リハーサルで歌う神野美伽(中央)=10月、大阪市

「ブギの女王」と呼ばれた笠置シヅ子と作曲家の服部良一は、大阪が生んだ歌謡界の名コンビだ。笠置の人生を服部の作品とともにたどる音楽劇が23日~12月1日、クールジャパンパーク大阪(大阪市中央区)で上演される。陽気なリズムで人々の心を明るくし、戦後復興の力となった音楽が、今も新鮮に響く。

「チョットオッサンこれなんぼ」。10月下旬、同パークで「SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE~ハイヒールとつけまつげ~」の音楽リハーサルが開かれた。ピアノ、ギター、ドラムにブラスバンドを加えた軽快な演奏とともに、大阪弁でまくし立てる歌声が響く。笠置が歌った「買物ブギー」だ。

主役に神野美伽

かさぎ・しづこ 1914年、香川県相生村(現・東かがわ市)で生まれ、養女となり大阪へ。大阪松竹少女歌劇団を経て38年に上京、服部良一と出会う。終戦後「東京ブギウギ」などが大ヒットした。ブギが下火になった57年に歌手を引退。女優業に専念した。85年、70歳で死去。

「止まったらおわりやな。シュッといかなあかん」。演奏が終わると、笠置を演じる演歌歌手の神野美伽が話し始めた。神野は大阪府貝塚市出身で、米国のロックフェスに参加するなどジャンルを超え活躍する。香川生まれだが大阪で育ち、屈託のない人柄で人気を集めた笠置とどことなく重なる。神野は「表現者として笠置さんは大好き。同時代に生きていたら、きっと共感し合えた」と笑う。

笠置は大阪松竹少女歌劇団で活躍後、東京の松竹楽劇団に見いだされ上京。しかし、戦時体制が強化されるにつれ笠置が歌うジャズは敵性音楽とされ、トレードマークだった大きな身ぶりさえ禁止された。「この劇で、想像できないような時代がいまの土台になっていることを知ってもらいたい」(神野)

戦争だけではない。音楽劇は、恋人の死や一人きりでの出産・子育てなど、波乱に満ちた笠置の生涯を点描する。神野は「現代は閉塞感ある社会を『しゃあないな』とあきらめることが常識になっている。がむしゃらに生き、歌い、楽しんだ笠置さんの人生から感じ取ることは多い」と話す。

一方の服部は、大阪が「ジャズの都」「日本のシカゴ」と呼ばれた大大阪時代に音楽の世界に入った。ジャズだけでなく、朝比奈隆も師事した指揮者のメッテルに音楽理論を徹底的にたたき込まれた。公演の音楽監督を務めるピアニストの小原孝は「単なる流行歌の作曲家ではなく、非常に音楽性が秀でている。今聴いても全く古さを感じない」と指摘する。

無名の作品に光

はっとり・りょういち 1907年、大阪市生まれ。26年にラジオ放送用オーケストラに入団。36年にコロムビア専属作曲家となり、淡谷のり子「別れのブルース」がヒット。戦後は「東京ブギウギ」「青い山脈」「銀座カンカン娘」などを作り国民的作曲家となる。93年、85歳で死去。

劇中では「東京ブギウギ」など今も歌い継がれる名曲だけでなく、埋もれた作品にも光を当てる。特に注目なのが「大空の弟」という軍歌。1940年に作曲し、作詞家としての別名義「村雨まさを」として詞も書いた。公演のため、服部の関係者が保存していた楽譜をひもといた。

「かねてより アジアをくるしめた あおい目をした ヤンキーども」。勇ましい歌詞にはじまり、楽譜のところどころに女性とその弟が手紙を朗読する指示が書き込まれている。笠置は実際に戦争で弟を亡くしており、2人のやり取りを念頭に置いていたとみられる。小原は「流行歌のようにわかりやすいメロディーではない。明らかに、手紙の言葉が先にあって作られたようだ」とみる。

笠置が歌った当時の手紙は見つからなかったため、今回は脚本のマキノノゾミが新たに創作。曲調はバラード調から軍歌風に転じる編曲にした。「もともとの曲もどこか反戦や平和への願いが感じられる」(小原)という。軍歌をほとんど作らなかったとされる服部の思いが推し量られる。

尾中美紀子プロデューサーは「ゆくゆくは全国でも上演し、大阪発で演劇や音楽を盛り上げたい」と語る。笠置と服部のコンビのように、大阪から旋風を巻き起こす意気込みだ。

(西原幹喜)

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