指揮者・尾高忠明、大病から復帰 音楽にさらなる深み

文化往来
2019/11/20 2:00
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指揮者の尾高忠明は病気療養中、音楽家の資料を読み込むなどして思索を深めた=飯島 隆撮影

指揮者の尾高忠明は病気療養中、音楽家の資料を読み込むなどして思索を深めた=飯島 隆撮影

1947年生まれの指揮者、尾高忠明は72歳の現在も大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務めるなど、国内外のオーケストラからの出演依頼が絶えない人気指揮者の一人だ。2019年に前立腺がんが発覚し、5月から治療のため約2カ月間活動を停止したが、このほど復帰を果たした。「まだ完治とはいえないが、思った以上に早く復帰できた。療養は私自身の人生を考えるためのいい機会だった」と語る。

父が作曲家の尾高尚忠、兄が作曲家の尾高惇忠という音楽一家に育った尾高は、20代で東京フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者に就任するなど若い頃からクラシック音楽界の第一線に立った。87年には英国のBBCウェールズ交響楽団(現BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団)の首席指揮者に就任。特に英国の作曲家エルガーの曲を得意とし、国内外で高く評価された。さらに父の名を冠した伝統ある作曲賞「尾高賞」の選考委員も務めるなど多忙を極めたが、「病気とはほぼ無縁で飛び回っていた」

病気が発覚したのは、毎年実施していた定期検査がきっかけ。がんと聞いて目の前が真っ暗になったが、早期発見だったと聞いて気持ちを切り替えた。闘病中は音楽家に関する資料や文献を読み込み、音楽家の人生、人間の生と死について思索を深めた。「私は今まで忙しすぎた面があった。病気は一度立ち止まってみろとのお告げだったのかもしれない」と振り返る。

2019年は大阪フィルでブラームスの4曲の交響曲を全曲演奏する企画などに取り組み、多くの聴衆から支持を集めた。伝統あるJXTG音楽賞も受賞した。2020年1月には大阪フィルの東京公演にも予定通り出演する。「人間についてじっくり考えた経験を生かし、音楽を楽しみたい」。大病を乗り越えた名指揮者の音楽はさらに深みを増しそうだ。

(岩崎貴行)

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