米弾劾、大統領選へ攻防 ウクライナ疑惑で初の公聴会

トランプ政権
2019/11/14 22:10
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【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領の「ウクライナ疑惑」に関する弾劾調査は米議会の公聴会に舞台を移し、新たな局面に入った。世論の支持の獲得をめぐり、与野党の攻防が本格化する。バイデン前副大統領の不正疑惑で野党・民主党も打撃を被るリスクを抱える。弾劾調査の行方が、2020年11月の大統領選に向けた選挙戦を左右することになりそうだ。

13日の米下院公聴会で証言するテーラー駐ウクライナ米代理大使(右から2番目)=AP

13日の米下院公聴会で証言するテーラー駐ウクライナ米代理大使(右から2番目)=AP

「米国の対ウクライナ外交には裏ルートがあった」(ウィリアム・テーラー駐ウクライナ代理大使)

「米国は他国に政治的調査を求めるべきではない」(ジョージ・ケント国務次官補代理)

米議会の下院情報特別委員会が13日開いた疑惑に関する初の公聴会で、証言に立った2人の外交官は疑惑の一端をこう明かした。

今回の疑惑の中核は、トランプ政権が軍事支援や首脳会談開催の見返りにバイデン氏の次男の不正調査をウクライナ政府に迫った点だ。同氏は大統領選で民主の有力候補の一人。トランプ氏が外交政策を自らの再選のために政治利用したとすれば職権乱用の疑いが強まる。外国勢力への選挙支援の要請を禁じた米連邦法に違反する恐れもあり、いずれも弾劾の根拠となりうる。

もっとも、テーラー氏らはすでに非公開での議会証言に応じている。トランプ氏がウクライナ政策よりもバイデン氏の調査を優先していたとする新たな情報もあったが、今回の証言はおおむね非公開で記録された内容に沿ったものだった。共和の議員は公聴会で2人がトランプ氏と直接話したことがない点をただし、「間接情報にすぎない」と攻撃した。

民主は現時点で計11人を公聴会に招いて証言を得る予定だ。中にはトランプ氏に近いゴードン・ソンドランド駐欧州連合(EU)大使も含まれる。トランプ氏本人が不正に関与した明確な証拠を引き出し、弾劾賛成の世論を引き出す狙いだ。

ただ民主に展望が開けているわけではない。10月末の弾劾調査の手続きを定めた決議では共和党の造反者がゼロだった。ホワイトハウス実習生と不倫関係にあったクリントン元大統領(民主党)の弾劾調査の決議では同党から31人が造反。1970年代前半のウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領は賛成410、反対4と圧倒的多数で正式な弾劾調査が始まった。

それだけに公聴会はトランプ氏からホワイトハウス奪還をめざす民主にも賭けとなる。「(ホワイトハウスに)利益相反となる可能性を伝えた」。ケント氏は証言で、15年にオバマ前政権の副大統領だったバイデン氏のオフィスに懸念を伝えていたと明かした。弾劾調査はバイデン氏への支持低下にも直結しかねない。

ウクライナ検察が捜査に着手していた同国の大手ガス会社「ブリスマ」幹部にバイデン氏の息子ハンター氏が就任したのと同じころ、バイデン氏は同国の検事総長の解任を要求した。息子を擁護した行為と受け取られかねず、共和議員も公聴会でこの疑惑を積極的に取り上げる可能性が高い。

「いかさまで、こんなことは許されない」。トランプ氏は13日、公聴会をこう断じた。民主が過半数を占める下院で弾劾訴追を回避するのは難しいが、上院での弾劾裁判で無罪を勝ち取れば大統領選にプラスになるとの計算も働く。

米ABCテレビなどの世論調査によると、トランプ氏の弾劾訴追への賛成は49%、反対は47%と真っ二つに割れる。ギャラップによると、民主支持者の87%が罷免に賛成する一方、共和支持者の92%が反対しており、党派間の分断は鮮明だ。今回の「劇場型」の政治ショーがどこまで世論を動かすのかは見通せない。

■民主、年内の訴追視野に

米民主党は公聴会の結果を踏まえ、過半数を占める下院でトランプ大統領の年末までの弾劾訴追を視野に入れる。上院を舞台としたその後の弾劾裁判は2020年1月の年明け以降になる公算が大きい。同年2月にアイオワ州から始まる20年大統領選の予備選に重なる展開となり、民主の指名候補争いに影響を及ぼす可能性がある。

米メディアでは、民主がクリスマスまでに下院の本会議で弾劾訴追を決めるシナリオが取り沙汰されている。

次に上院で開かれる弾劾裁判では出席議員の3分の2が賛成すればトランプ氏は有罪となり、罷免される。議会上院はトランプ氏が率いる共和党が過半数の議席を占めており、罷免のハードルは極めて高い。

全米では2月3日の中西部アイオワ州での党員集会から大統領予備選が始まる。上院の弾劾裁判は5~6週間かかるとみられており、大統領選の選挙戦と日程が重なることが想定される。

このため、弾劾裁判は大統領選の行方に直接的な影響を与えそうだ。民主が上院で共和党の造反を得られず、トランプ氏の留任が確定的になればバイデン氏は劣勢に立たされる。

民主内では来年2月から中道派のバイデン氏と、ウォーレン上院議員など急進左派の指名候補争いが本格化する。「トランプ弾劾」をめぐる情勢は、政権奪還をめざす民主の候補者選びのカギを握ることになる。

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