17日開通の天龍峡大橋 観光再生の切り札に

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コラム(地域)
2019/11/14 15:39
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長野県飯田市と静岡県浜松市を結ぶ三遠南信自動車道の建設で、飯田市南部の区間が17日開通する。同区間には天竜川を渡る天龍峡大橋が架けられ、その桁下には歩廊(歩道)も整備された。眼下に国の名勝「天龍峡」の荒々しい渓谷を一望でき、新名所として期待される。かつて全国有数のにぎわいを見せた観光地の再生に向け、地元も誘客事業に動き出した。

天龍峡大橋下部の歩道から眼下の広がる天龍峡を眺められる

天龍峡大橋は鉄橋を渡るJR飯田線の眺望ポイントに(歩行者に開放された大橋の車道から撮影)

三遠南信道の天龍峡IC~龍江IC間の開通記念プレイベントで渡り初めする参加者

「メインスポットが天龍峡大橋。遊歩道も整備された。もう1つの天龍峡を堪能できる目玉施設になっている」。10日午前、飯田市内で開催された開通記念プレイベントで、同市の牧野光朗市長は観光振興への期待をこめた。

この日は17日の開通区間「天龍峡IC(インターチェンジ)~龍江IC」が歩行者向けに開放された。天龍峡大橋の桁下の歩廊「そらさんぽ天龍峡」も通行できるとあって、渡り初めをしようという大勢の人々でにぎわった。

注目の天龍峡大橋は長さ280メートル。天竜川から高さ80メートルに架けられている。その桁下の「そらさんぽ」は幅2メートルの歩道だが、途中に渓谷側に張り出した展望スポットもある。歩廊の壁となる金網の格子は、隙間から一眼レフカメラのレンズも出せるサイズに設計され、SNS(交流サイト)などで発信したい人に配慮されている。

午後1時前の天龍峡大橋。「飯田線がもうすぐ通るよ――」。こんな声が上がると、カメラを抱えた人が集まってきた。天龍峡を背景に鉄橋を渡る車両の姿が見えると、シャッターを切る音が鳴り響いた。

大橋そのものは開通後は車道となるため、歩行者は出入りできない。かわりに桁下の歩廊からは渓谷が一望でき、鉄道ファンにも新名所になりそうだ。初めて歩廊を通行した天龍峡観光案内所の担当者は「揺れずに安心して天龍峡を見られた。大勢来てくれてうれしい」と満面の笑みで話す。

天龍峡の川下りも楽しいが、周囲に整備された遊歩道を巡って天竜川の流れや奇岩を眺めるのも一興。観光業界は早速新たな魅力をPR、誘客に動き出した。JR天竜峡駅前にある観光案内所で9日午後、南信州観光公社(飯田市)の天龍峡ガイド養成講座が開催、募集定員を上回る約40人が参加した。

本格的なガイドの養成は初めて。講師となった同公社取締役の藤沢安良さんは遊歩道のシダレザクラの前で、花に早い時期なら「満開の写真を用意して客に見せるといい。春にまた来てくださいと案内してみては」と助言した。同公社は2018年に日本版DMO(観光地経営組織)に認定された。地域資源を活用した観光商品開発を急ぐ。17日の開通に合わせて「伊那谷"水"紀行」のツアーを企画し、その中で天龍峡大橋の歩廊を案内することにしている。

実は天龍峡の観光地開発の歴史は古い。明治時代から注目され、この地を詠んだ歌や俳句もある。明治末期から昭和初期にかけては観光地開発も進んだ。1927年(昭和2年)にはメディアが実施した「新八景」選定で話題になり、全国的な観光地に。10年ほど前からこの歴史を踏まえ「天龍峡再生」と題する新たな開発事業も始まった。今回、大橋開通は大きな節目となる。

今後は2027年のリニア中央新幹線の開業後、天龍峡への誘客にどのように取り組むかが焦点となりそうだ。飯田市にできるリニア新駅はJR飯田線に近い。地元が要望する乗り換え新駅ができれば、天龍峡の入り口にある天竜峡駅まで簡単に行ける。

ただ最近の飯田市の新駅周辺整備事業で乗り換え新駅の話題は表だって議論されていない。地元企業からは「天龍峡観光を考えると、リニア開通に伴うJR飯田線への展開を考えていかなければならない」との声も出ている。飯田線は観光面での役割が期待され、秘境駅が売り物だ。リニア時代の到来を踏まえ、天龍峡再生のためには、飯田線の活用戦略も早急に考える必要がある。(竹内雅人)

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